強盗団の不可思議な動きに不審を感じたフレイジャーは、銀行の内部に自ら入り込んで状況を探るきわどい作戦を立てた。
航空機の準備ができたが、強盗団の要求を受け入れる前提条件として、構内に拉致されている人質が無事かどうかを確認させてほしい。フレイジャーはそう要求した。ボスはすんなり受け入れた。
フレイジャーは身体検査(武器携帯がないことを確認)されたのちに、ボスによって行内に案内された。ボスは、地下の何部屋かに分けて閉じ込めてある人質の様子をフレイジャーに見せて回った。人質たちは全員がダークマリンのジャーンプスーツを着せられ、フードをかぶり、マスクとサングラスをさせられていた。したがって、人質たちは互いに身体の大きさや体型、性別などについてはどうにか識別できるが、互いに顔がわからないという状態だった。
人質の様子を確認したフレイジャーは出口に向かった。ところが、階段でフレイジャーはボスに襲いかかり、銃を奪おうとした。ボスは反撃してフレイジャーを撃退したが、銃を発射したり暴行を加えようとはしなかった。
挑発して怒らせようとしたが、ボスは完全に冷静に対応した。そして、暴行や殺戮は全面的に抑制しているように見えた。
「彼らは人質に危害を加える意図はない。持久戦に持ち込んで交渉していけば、事件を解決できるのではないか」フレイジャーはそう考えた。
ところが、彼の見込みは裏切られた。
ボスが電話してきて、「2階の部屋に注目しろ」と告げた。警察側は2階の窓を眺めた。 すると、そこにボスが人質の1人を連れてきた。部屋の中ほどに人質を立たせると、いきなりボスは銃弾を浴びせた。倒れていく人質の胸や腹から血が飛び散った。
「いいか、こちらは必要なら殺人を厭わないんだ。フレイジャー、これが先ほどの挑戦に対するわれわれの答えだ。早くジェット機とバスを用意しろ!」受話器からボスの叫びがこだました。
フレイジャーの作戦は人質の殺害という結果を招いてしまった。市警の課長は、フレイジャーをこの銀行強盗事件の指揮官役から外して、ダリウスに今後の指揮を委ねた。