インサイドマン 目次
奇妙な銀行強盗
見どころ
あらすじ
いく人ものスティーヴ
ニュウヨーク市警察局
銀行会長アーサー・ケイス
闇の過去
警察と強盗団との駆け引き
強盗団の奇妙な行動
やり手弁護士の介入
フレイジャーの挑戦
大混乱に消えた強盗団
捜査の幕引きと疑念
ユダヤ人狩りとスイス銀行
なぜ、資料を秘匿保管し続けたのか
ユダヤ人団体の返還要求
ロスチャイルドの転身
強盗団は誰のために動いたのか
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コンドル

大混乱に消えた強盗団

  ダリウスは、強盗団との交渉は決裂に近づいたと判断した。時間稼ぎもここまでと判断した。そして、準備が整いしだい、閃光弾や催涙弾投擲とともにSWATを突入させて強盗団を制圧(掃討)して、人質を解放するという作戦を敢行することを決定した。
  おりしも突入態勢の準備が完了した頃合い、強盗団が警察側の突入準備を見計らったかのような行動を取った。人質2人をロープで天井から逆さ吊りにして、警察の突入に対抗する素振りを見せたのだ。
  「やつらは、警察の動きを完全に読んでいる。こちらの情報が筒抜けになっている!」
  フレイジャーは、強盗団が返してきたピザの箱とメッセイジボードに盗聴器が仕かけられているのではないかと疑い、調べ始めた。すると、超小型の隠しマイクが出てきた。
  強盗団はSWATの突入のタイミングを知っている。そう気づいたフレイジャーは、ダリウスに突入を止めるよう警告した。だが、寸前まで迫った急襲態勢を撤回することはできなかった。SWATは突入しようとした。

  そのとき、銀行内で催涙弾と発煙弾が炸裂した。SWATが同じような攻撃を仕かけようとした寸前だった。窓ガラスは外側に向かって吹き飛び、煙が充満し、大混乱が起きた。行内の人質たちは一斉に、閉じ込められていた地下からロビーに我勝ちに飛び出してドアから屋外に逃げ出してきた。
  というのも、人質と同じ恰好をした強盗団が人質たちに、地上階に出て逃げ出すように号令をかけたからだった。
  銀行からは何十人ものジャンプスーツ姿の群衆が飛び出してきた。警察は銃を構えて彼らの動きを静止しながら、1人ずつ拘束し身体検査したのちに、全員をバスのなかに回収した。この群衆のなかに犯人たちが紛れ込んでいるかもしれないからだ。
  警察は人質全員を医療班の検査に回して健康診断をした。そのあと、一人ひとりに尋問を開始した。

「大騒動」のあと――事件の法律上の「消滅」

  ところが結局のところ、強盗団のメンバーと思しき容疑者は1人も捕捉できなかった。誰もが怪しいのだが、誰一人として容疑を裏付ける素振りや証拠は見つけられなかった。
  人質たちを1人づつ尋問してみても、いち早く全員が同じジャンプスーツとマスクを着用させられたので、隣にいた人物の大体の体型や性別ぐらいしかわからないという始末だった。
  事態の収拾と証拠の発見・保全のために銀行内に入り込んだ警察は、強盗団が用いた機関銃や拳銃を調べたところ、全部がモデルガンであることが判明した。つまり、「殺意の不在」が立証されたわけだ。

  では、フレイジャーによる挑発ののちにダルトンが2階で銀行員を射殺したシーンは何だったのか。
  一味の誰かが変装して銀行員になるすまし、血の色の顔料が詰まった袋を胴体に巻きつけて、モデルガンのゴム弾が当たる衝撃で破裂して血まみれになったように見せる仕かけだったのだ。こうして、殺害された者もゼロとなった。
  その後の銀行支店側の調べにより、現金や証券類の被害もまったくなかった。銀行の被害もなし、ということになった。
  ただ、地下室の貸金庫のボックスが1つ壊されていたが、管理記録上はそこを借りた人物は存在しない、つまり誰も借りていないというわけだ。こうして、物財上の被害もゼロとなった。器物損壊という軽微な罪状だけが残された。

  そうなると、マンハッタン信託銀行支店としては、銀行施設の不法占拠と顧客の拉致があっただけで、人的にも物的・金銭的にも被害はまったくなかったので、事件の被害届や告訴を提起しなかった。銀行としては、事件や不祥事を表沙汰にしたくないからだ。
  しかも、銀行の独裁的な経営者アーサー・ケイス自身が、自分の闇の過去を記した書類の件に完全に蓋をしようと思った以上は、銀行側としては、できるだけ早く混乱を収拾して業務を再開したいという希望を警察に要望するのみだった。
  もちろん、ニュウヨーク屈指の資産家アーサー・ケイスの政治的な影響力が市長と市政――警察を含む――に無言の圧力を加えていた。

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