さて、青木に無理やり銀行前まで連れていかれたタケだったが、金アレルギーのため、銀行内で金銭がやり取りされる場面を見ただけで、身体が震え出し、ふらふらと足をもつらせながら戻ってきた。
このときになって、青葉はタケをかばおうとするが、タケ自身は意識が朦朧としていて、逃げ出すこともできなかった。
青葉はタケへの恋心と、青木の命令に従わなければならないというシガラミとの板挟みになっていたのだが、ここにきてついにタケへの恋心に忠実に生きようと決めたようだ。
その光景を、いそ子が見ていた。彼女は、整骨院で痛めた腰の治療を終えたばかりで、大型バイク、ハーレー・ダヴィッドソンに跨ろうとしていたときだった。ただちにいそ子は、天野町長に携帯電話で連絡した。おりしも天野は、町営バスで老人たちを町に送り出そうとしていたところで、連絡を受けて、バスの巡路を変更し最初に銀行に回ることにした。
ところで、長身で足が長くスタイル抜群のいそ子(片桐はいり)のライダースーツ姿はめちゃくちゃ格好いい! それで、ハーレーに跨る姿は絵になる。
さて、天野はボケ老人たちに手を焼きながら銀行の前にバスを回して停めた。そして、タケから引き離した青木と凄絶な殴り合いを始めた。天野は怒りが昂じると闘争に歯止めがかからなくなる性格で、青木をボコボコにしたあげく、バケット一輪車でとどめを刺そうとした。天野はヤクザやチンピラに対して強い憤りや怒りを抱えているのかもしれない。
そこに、いそ子のハーレーの後部座席に跨って「なかぬっさん」が現れて、天野を宥めてケンカを止めた。
「なかぬっさん」は、青木がタケを殴っている光景を撮った写真のプリントを見せながら、青木に迫った。
この写真を警察に持ち込めば暴行罪どころか、過去の余罪についても暴露され処罰されることになるが、それが嫌ならタケの写真画像を消去しろと迫った。
さてその頃、青木から解放されたタケは、青葉から「私を連れて東京まで逃げて」と迫られてバスを運転して走っていた。だが、タケは免許を取ってから10年間ずっとペイパードライヴァーだった。
つまり運転技術ははからきしで、道路上の猫やら野菜を避けて走るうちに暴走して、何と青木の自慢の黄色のGTRに衝突して大破させ、バスはひっくり返って裏返しになってしまった。
その事故現場に駆けつけていくパトカーのサイレンに怯えた青木は、なかぬっさんの要求に屈して、タケと青葉の写真を消去した。そして、GTRを駐車場所に戻ってみると、愛車がボコボコに壊れていた。
もっとも、GTRは青木が田舎町で見栄を張るだけのクルマで、雪の山道やぬかるんだ農道を粋がって走っていたためにすでに相当に傷んでいた代物だったようだ。