ペンシルヴェニア州フィラデルフィアで遊説中の大統領が狙撃された。
1.6kmを超える射程からの銃撃で、銃弾は大統領を逸れて、エティオピアの大司教の頭部に命中。その直後、アメリカ海兵隊狙撃手、ボブ・リー・スワガーが容疑者として手配された。容疑者は警官に撃たれて重傷を負っているという。彼はFBIの若手捜査官を襲って銃と車を奪って逃げた。
ボブは陰謀の罠にはめられのだ。重傷を負ったボブは軍情報部とFBIの捜索をかいくぐって逃亡した。
やがて、傷を癒したボブは謀略の首謀者たちに反撃を開始した。
報復作戦を開始した。そのために、ボブを逃がしたことで窮地に追い込まれていたFBI捜査官ニックを仲間に引き入れた。
一方、巧妙に仕かけた罠からボブを逃がしてしまったジョンスン大佐は、ふたたびボブを罠に捕らえようと企図していた。ジョンスンの背後には政治権力と軍部の闇のネットワークが潜んでいた。
こうして、市街地やロッキー山脈の頂上、森林地帯などを舞台として、ボブとジョンスンは相手を罠に陥れようとする壮絶なゲイムを繰り広げることになった。
ペンシルヴェニア州フィラデルフィア。アメリカ東部諸州の独立と合衆国(連邦レジーム)の発祥の地であるこの都市で、遊説に訪れた大統領が狙撃される事件が起きた。事件後の調査では、狙撃は1640m以上の距離(極大射程)からだったと判明した。
超遠距離のためか、銃弾は大統領から逸れて70cmほど離れていた、エティオピアの大司教の頭部に命中した。
事件と同時くらいの直後、容疑者が特定された。海兵隊(USMC)狙撃隊軍曹のボブ・リー・スワガーだという。狙撃の直後に警戒中のフィラデルフィア市警の巡査に銃撃され、右肩と脇腹に銃弾を受けたもよう。重傷だという。
だが、ボブは狙撃地点とはかなり離れたビルの窓から落下して、逃走した。しかも、ボブは遠距離狙撃の名手で、もし大統領を狙ったとするなら、過去の実績から見て、これほどの失敗をすることはないだろうとも見られている。
逃走したボブは警戒任務についていたFBIの若手捜査官(ニコラス・メンフィス)を襲って銃と車を奪った。だが、ただちに車とナンバーが特定され、執拗な追跡と分厚い操作網によって追い詰められていった。
ところが、包囲されたボブは車でデラウエア河に飛び込み、そのまま行方をくらました。
その2週間前、ボブ・リー・スワガーは、ワイオミング州の深い山中にいた。人里離れたロッキーの森林のなかにある山小屋で、もう3年間も、愛犬とともに暮らしていた。人との接触を避ける「世捨て人」のように。世を拗ねて何かから逃げているような暮らしぶりだった。
その孤独な変人を訪ねた男たちがいた。
一団のボスは、海兵隊の大佐アイザック・ジョンスン。したたかな軍略家で、人相の悪い屈強な護衛を引き連れていた。
彼はスワガーに、テロリストによって大統領の狙撃が計画されているという情報を得たので、狙撃阻止に協力してほしいと依頼した。大統領は近く連邦各地を遊説する予定だが、その遊説先のどこかで狙撃が企図されているという。ワシントンやフィラデルフィア、ボルティモア…。
そこで、狙撃の名手のスワガーに、これらの都市の遊説場所を調べてもらって、狙撃が可能な場所を特定し、その対策を練ってほしいという頼みだった。
だが、ボブは即座に断った。
しかし、大佐は「国家への忠誠」「愛国心」という言葉を掲げて、ボブに強く協力を求めた。そして、気が変わったら、調査をおこなって結果を報告してほしい、と連絡先のカードを渡した。
ところで、「愛国心」を引き合いに出したからには、このアイザック・ジョンスン大佐、箴言のとおり、極めつきの卑劣漢である。
ボブは、3年前、逃げるように退役し、そのあと山にこもって「国家」や「軍組織」と関わり合いになるのを避けてきた。