相棒としてのニックの最初の任務は、テネシー州に住む老人のところまで車を運転することだった。その老人は、銃(の製造、性能や使用方法)に関しては、メーカーはもちろん、学者をも凌ぐ知識をもっているスーパーフリークだった。
ボブは、その老人のところに2つの質問を携えて訪れた。
1つ目は、すでに銃の旋条痕がついた(使用済みの)銃弾を別の銃で使用して狙撃ができるかという疑問。というのは、エティオピアの大司教を殺害した銃弾には、ボブの愛用狙撃銃の旋条痕が刻まれていたからだ。ボブが試し撃ちした銃弾が使われたらしい。どうやれば、そんなことが可能なのか。
2つ目は、2000メートルを超える射程の狙撃を成功させる技能を持つ狙撃の名手として、今回の事件に関与しそうな人物に関する情報はないか、だった。
老人が与えた回答は、
1つ目については、一度発射され旋条痕がついた銃弾に繊維が強い紙を隙間なく巻きつけて薬莢と結合せて、装填すれば、正確な射撃ができるというものだった。
2つ目については、セルビアックという残忍な殺し屋――すでに殺されてしまった可能性が高いが――まだ生き延びていれば、2000メートル超の狙撃を成功させるだろうというものだった。