シン・ゴジラ 目次
政治劇のテーマ…ゴジラ
見どころ
謎の巨大海洋生物の出現
「ものぐさ巨獣」の退散
多摩川の「決戦」
アメリカの動き
ゴジラのエネルギー代謝
恐るべきゴジラの反撃
内閣(政府中枢)の消滅
熱核攻撃まで15日
ヤシオリ作戦
ゴジラ凍結!
政治劇としての印象
ゴジラの形状特徴について
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風の谷のナウシカ
2014年版ゴジラ

多摩川の「決戦」


  さて、超巨大生物は景品運河から東京湾に姿を消した。その後、海上自衛隊や海上保安庁による捜索でも東京湾内にはいないことが確認された。相模トラフ(海底峡谷)に身を潜めたようだ。
  一方、矢口蘭堂は、巨大怪獣が太平洋に潜伏している間に、怪獣を駆逐するための対策研究組織を発足させた。そこには、突出して優秀だが、中央官庁組織内では鼻つまみ者になっている異端者ばかりが集められた。
  そのメンバーとなった環境省の女性研究官は、怪獣の移動後に微量の放射線が残留していたことと、巨大な身体を動かしながら、堅固な人口構築物をたやすく破壊して移動する活動エネルギーの巨大さから見て、核分裂がエネルギー源ではないかと推定した。

  ところが、数日後、相模湾鎌倉沖に超巨大怪獣が現れ稲村海岸に上陸した。
  先日の巨大生物が相模トラフに潜みながら進化=形態転換を続けて、小さめに見積もっても体長は400メートル、直立体高は160メートル近くになっていた。身体のなかでは尾が占める割合がきわめて大きい。身体表皮はケロイド状の鱗で覆われ、鱗の隙間から赤く光る表皮が見える。直立歩行に使う後肢はみごとに発達しているが、前肢は貧弱でほとんど動かないように見える。
  巨大怪獣は鎌倉市から北東に進路を取り、直進して川崎市の工業地帯に入り込んだ。京浜工業地帯沿いに東京都心に向かっているように見えた。


10式戦車

  政府は首都防衛のために巨大怪獣を「駆除」すべく、自衛隊統合幕僚部の指揮下で臨戦態勢を組んだ。そして、多摩川を最終防衛線として、陸上自衛隊の対戦車ヘリ・アパッチ編隊による上空からの攻撃、10式戦車隊や地対地ロケット砲部隊、航空自衛隊F2戦闘機編隊によるミサイル攻撃、東富士演習場からのミサイル攻撃の態勢を準備した。
  局地戦場となる川崎市一帯の住民全員を緊急避難させたうえで、首相は総攻撃の命令を出した。政府の方針としては、戦域となりうる区域から住民を避難させたあとでないと、自衛隊の攻撃用武器の使用を許可しないものとされた。
  ヘリコプターや戦車、ロケットランチャーからの滑空砲弾やミサイルはコンピュータ誘導方式でほとんど全断が怪獣に命中した。ところが、怪獣の表皮にはまったく損傷損耗が見られなかった。

  そういう通常兵器の砲弾やミサイルでも爆心では温度は数万〜数十万℃――中型のミサイルでは数百万℃――になり、爆風(大気の瞬間的膨張圧と超高温の熱風)による破壊力はきわめて大きいのだが、鱗のひとつさえ剥落しなかった。タングステン接合鋼鉄の戦車装甲よりもはるかに強度が大きいというわけだ。
  表皮の細胞組織から見てもそんな生物はありえないのだが、そういう設定だから仕方がない。 要するに通常兵器は怪獣に対して何の痛痒も与えなかったようだ。そのため、怪獣は自衛隊の攻撃を避けようとしたり振り払おうとしたりするような動き、あるいは反撃動作は一切見せなかった。相変わらずものぐさそうにゆったり歩くだけだ。

  それでも少し足をあげるだけで、多摩川に架かる橋梁は空中高く飛ばされ、落下するさいに退避後退する戦車数両を圧し潰した。
  多摩川増に構築された管制高地の陣地もあっけなく壊滅した。
  自衛隊としては総力を挙げて決戦に臨んだわけだが、巨大怪獣としては、砲火やミサイルをものともせずに、身に脅威と感じることもなく、ただもっさりと歩き続けただけなのだが。
  こうして多摩川沿いの防衛線は手もなく崩壊してしまった。対岸の東京都大田区では住民避難が完了してなかったので、多摩川の防衛線の崩壊をもって、首相は作戦終了を命じた。つまり、全面的な敗北を認めるしかなかった。

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