シン・ゴジラ 目次
政治劇のテーマ…ゴジラ
見どころ
謎の巨大海洋生物の出現
「ものぐさ巨獣」の退散
多摩川の「決戦」
アメリカの動き
ゴジラのエネルギー代謝
恐るべきゴジラの反撃
内閣(政府中枢)の消滅
熱核攻撃まで15日
ヤシオリ作戦
ゴジラ凍結!
政治劇としての印象
ゴジラの形状特徴について
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政治劇のテーマとなったゴジラ

  これまでの映画のなかで、ゴジラは地球上の通常の生物学的原理がまったく通用しない生き物として描かれてきたが、今回登場するゴジラもさらにまた一段と「ぶっ飛んだ」生き物として描かれている。
  ところが、生き物としての身体の動きは恐ろしくズボラに描かれていて、初期段階ではのた打ち回るように地上を這うだけ、やがて進化してからは直立して緩慢に歩き、ときおり背中を丸め、首や尾を振り回すだけだ。
  しかし、口や身体、尾の先端から発射されるレイザーのように収束性の高い熱光線の破壊力は最高にすさまじい。
  つまり、ものすごく動きが「ものぐさ」な一方で熱光線の破壊力が驚異的な超生物というわけだ。
  1頭の個体のなかで急激に進む突然変異と進化を見ると、ゴジラは多様な生物の巨大な群体――たとえばサンゴのように――であって、たしかに1つの有機的なシステムではあるが、1頭の生物個体ではないかのようにも見える。

  要するに、生き物キャラクターとしてのゴジラの性格や生態、存在に関してはボンヤリとしか描かれていない。
  これに対して、日本の永田町の政治劇のメカニズムやら霞が関の官僚の一群の行動スタイルは実に克明に描かれている。統治政党である保守政党の若手トップ集団と異端視されているオタク専門官僚や科学者たちが、ゴジラ出現という危機事態にどう対処していくかを描き出すことが、この映画のメインテーマとなっていると言えるだろう。
  これに連動して、日本の軍事力を担う自衛隊の装備や作戦での展開形態、政府と自衛隊を「上から」そして「外から」構造制約する日米安全保障体制――軍事構造における日本の合衆国への全面的従属状態――や世界の軍事構造もまた、一定の視座からくどいほど鮮明に描かれていく。

  言ってみれば、『シン・ゴジラ』は日本を舞台とした《政治=軍事スリラー作品》として仕上がっているのだ。もとよりフィクションなので、描かれる政治構造や軍事構造は戯画化カリカチュアライズされ、極端化=単純化された「イデアルティプス」の相において描かれている。主題は日本の政治と軍事で、ゴジラは「添え物」のごとく。というよりも、政治と軍事を描き出すために、このようなゴジラが用意されたというべきか、ゴジラはあまり魅力的に造り込まれていない。

  このサイトの記事『ゴジラ & 怪獣映画』で私は、巨大怪獣映画『ゴジラ』を日本が置かれた軍事=安全保障環境のなかに位置づけて考察した。それなりのリアリティをもって、日本を舞台に怪獣と戦う軍備や兵力が描かれる限り、日本の軍事状況や日本の世界軍事環境のなかでの地位が描かれざるをえないからだ。
  そういう視点で見ると、『シン・ゴジラ』は、まさに日本の政治構造と軍事環境をこそ分析的に描くための物語に徹しているように見えるのだ。
  別の言い方をすると、現代世界のなかに存在する日本の政治=軍事構造のなかに「ゴジラという巨大怪獣」をキャスティングしたら、どうなるか……についての映像シミュレイションとなっている。

見どころ

  現在の自民党安倍政権はスキャンダルが続発して、人気や支持率は落ち目の一方だ。だが、『シン・ゴジラ』が公開された頃は支持率も人気も高く、政権への期待もそこそこ大きかった。
  この映画に登場する若手有力政治家の行動力や発想の斬新さを、あるいは安倍政権に重ねたり仮託したりした人たちもいたのではないだろうか。アメリカへの過度なほどの依存――つまり卑屈なほどの従属性――の見せ方もまた、安倍政権の特徴と重なっていたようにも見えるし……。

  ところが今、安倍政権の止めどのない凋落の兆候のなかでこの映画を観ると、現実の政治の対極にある「理想化された姿」を描くことで、現実の政治をカリカチュアライズし嘲笑していたのではないかと思えてくる。
  むしろ、日本の政治の軍事の限界というか輪郭線を巧みに描くために、このように珍妙奇妙なゴジラを登場させたのではなかろうか。

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