ミュージック・オブ・ハート 目次
音楽は心のよりどころ
原題と・・・
見どころ
あらすじ
夫に捨てられて
ジャネットとの出会い
ブライアンとの恋愛
前途多難な教室
チャールズとの離婚
足場は少しずつ固まる
最初のコンサート
10年後の試練
ラモン・オリヴァス
母親を心配する息子たち
けなげな生徒たち
予算削減で教室閉鎖の危機
教室存続への創意
カーネギーホールへの道
生徒と一流プロとのコラボ
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アマデウス
のだめカンタービレ
ブ ロ グ
知のさまよいびと
『刑事フォイル』
信州の旅と街あるき

母親を心配する息子たち

  ある夕方、ロベルタが帰宅すると、郵便受けは手紙の山になっていた。送付された請求書の封筒を取り去ると、残りはほとんどが、ロベルタに交際を申し込む男性からの手紙ばかり。なぜ?!
  はっと気がついたロベルタ、2回に向かって怒鳴った。
「ニック、レクシー、ここに来てどういうことか説明しなさい!」
  2人の息子を問い質すと、ニックとレクシーは新聞に母親になり代わって、「交際希望の男性募集」の広告を出したらしいことが判明した。
「当方、子持ちで美貌の中年女性。そろそろヴァイオリンの独奏に食傷したので、交際相手を募集。辛辣な毒舌に耐える自信のある勇気ある男性を求む」というのが、新聞記事の内容だ。文案はレクシーが考えた。
  バックアップは得てして「余計なお節介」ともなる。だが、ロベルタとしては子どもたちの成長を喜ぶ面もあった。

  このとき、ニックは17歳でレクシーは15歳くらいになっている。
  ニックは高校生、あるいはジュリアード音楽院の学生かも――あるいはバークリー音楽院か?――。というのも、ロベルタはこれまでにジュリアードに優秀な年少ヴァイオリニストを何人も送り込んでいて、今では音楽院から入学者の推薦資格を認められているくらいなので、3歳から厳しく仕込まれた息子がジュリアードに入るのはそう困難ではないはずだから。
  しかし、ニックの今の専門はチェロだ。チェリストをめざしている。
  母親からの自立の1つの形態かもしれない。母親の専門楽器から離れると、助言や指導もあまりなくなり、苦難も努力の方向の模索も自分だけでできるから。
  要領のいい次男、レクシーは今でもヴァイオリンを続けている。けれどもピアノ(鍵盤楽器)の腕前もかなり高い。ときには、レクシーがオーケストラ部分を伴奏して、チェロ(ニック)とヴァイオリン(ロベルタ)の母子のチェロ・ヴァイオリン協奏を楽しんでいる。

「息子たちが母親のデイトの心配をするなんて!」と、息子たちをたしなめたロベルタだったが、交際を申し込んできた手紙をすべて一通り読んでみた。なかには、刑務所で服役中の男からの手紙もあった。
  ロベルタが一番気に入ったのは、コロンビア大学のジャーナリズム専攻教授のダン・パクストンの手紙だった。ウィットの利いた知的で洒落た文章が気に入ったのだ。というわけで、デイトの申し込みを受けることになった。

  当日、宵の口になると、ロベルタは落ち着かなくなった。
  と、玄関の呼び鈴が鳴った。ロベルタは支度するために自室に入った。
  ダンを迎え入れたのは、レクシー。やがて、ロベルタが現れて、ダンとともに外出することになった。息子たちは、ダンが長身で穏やかな男らしさを備えているのが気に入った。
  ニックはドアを出るロベルタに声をかけた。
「お嬢さん( young lady :若いご婦人よ)、門限は真夜中(12時)だよ!」
  ゆっくり楽しんできてね、という含意だろう。
  その夜のデイトはうまく運んだようだ。だが、ロベルタは恋人としてダンと付き合う心の準備がなかったので、親しい異性の友人として付き合いを始めることにした。
  じつはダンは、仲間内でのポウカーに負けたために――ロベルタ自身ではなくその息子たちが出した個人広告に応えて――交際申込みの手紙を書く破目になったのだ。周囲の仲間が独身を続けているダンにお節介を焼いたのかもしれない。だが、「瓢箪を振ったら駒が出てきた」ので、結果は上々だった。

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