ところで、リチャード・ハンターが死んだ夜、海辺の丘の近くの道路上に1台の自動車が停められていた。クロニクル紙の記者、コリン・モートンのクルマだった。
彼はこのところ、爆撃被災地の悲惨な状況を取材し特集記事にしていた。破砕され焼け焦げた家屋、黒焦げの遺体などを毎日のように見てきたのだ。
モートンは空爆の恐ろしさを知ることになった。そのため、夜は住居のなかで眠ることができなくなってしまった。そこで、夜は郊外の路上にクルマを停めておいて、そこで眠ることにするようになったのだ。
その日も、彼はクルマのなかで眠っていた。だが、夜半過ぎ、物音で目が覚めた。
窓から外を見ると、誰かがクルマの傍らを息せき切って走てきて立ち止まり、振り返るところだった。
モートンはその男の顔を見た。
さて、フォイルは記者のモートンが海辺近くの道路にクルマを停めて寝ていたことを知り、リチャードの死の謎を解くための情報を得ようとクロニクル紙のオフィスを訪ねた。
ところが、モートンは取材に出たまま帰社していないという事情を編集長から聞き出しただけだった。そこでフォイルは、事情を聴きたいのでヘイスティングズ署に出向いてくれという伝言を残した。
やがて帰社したモートンは、伝言を受けてフォイルを署に訪ねた。だが、そのときフォイルはオクスフォードに行っていたため、会えなかった。
そこで、モートンは署の受付係の警官にメモを言づけることにした。その警官はメモをフォイルの机の上に置いて、変則ギアをホールダーにした鍵を重しとして乗せておいた。それはリチャードの持ち物だった。
ところが、その真夜中、何者かが警察署に侵入してメモとキイ・ホールダーを盗み出した。しかも、まもなくモートンのクルマも何者かに襲われ、彼は無理やり連れだされてしまった。
何者かが、リチャード・ハンターの死の真相をフォイルが解明するのを阻止しようとしているらしい。
翌朝、署に出勤してきたフォイルは、メモが盗またうえにモートンが行け不明になったことから、何者かがリチャードの死の真相解明を阻止しようと動いていることを知った。だが、フォイルには誰の動きか想像がついたようだ。