一方、フォイルは戦災現場での掠奪事件についても捜査を進めていた。
これまでにフォイルの指揮下で一度、何人もの警察官を動員して、義勇消防団41E分署の詰め所を捜索したが、盗まれた硬貨や貴金属、美術品を見つけ出すことができなかった。
分隊長のジェイミスンは、見つかるわけがないと自信たっぷりに、ふてぶてしい態度で捜索を眺めていた。
分隊のなかでケネス・ハンターだけはほかの分隊員たちと打ち解けない様子だった。むしろ、被災地で掠奪を平然とおこなう彼らを嫌っていた。というのも、彼は戦災地掠奪禁止法が制定されて最高刑が死刑であることを知っているからだった。
フォイルはケネスが何か知っていると睨んで、あるとき執拗に問いかけた。すると、「ぼくは何も知らない。ジェイミスンに聞けばいいだろう」と言い放って立ち去った。
ということは、ケネスはジェイミスンの略奪行為を目撃したことがあるのだが、口止めされているのだろう。
とすれば、盗品の隠し場所を見つけ出せば犯行を証明できるだろう、そうフォイルは作戦を立てた。
掠奪の被害にあった現場を訪ねて、盗み出された物品が何かを調べてみると、硬貨や貴金属、宝石、金属製の像などだった。傍らに預金通帳や高額紙幣、そのほかの有価証券があっても盗まれていなかった。
つまり、ある程度重みがある金属や鉱石でできている製品だ。 おそらく、そういう材質の物品だけ盗み出すのは、隠し場所のせいだ。紙製品は隠すことができない場所だ。そう判断したフォイルは、前回の捜索で調べなかった場所で、硬く重い物を隠す場所はどこか推理した。そして、結論が出た。
翌朝、フォイルは警官隊を率いて分隊詰め所の再度の捜索に赴いた。ジェイミスンは相変わらずふてぶてしい態度だった。
フォイルは「隠し場所がわかったよ」と言いおいて、床上2メートルほどの位置に設えてある消火用水の水槽に縁に上ってなかを探り、水中に隠してあった袋を見つけ出した。袋のなかには貴金属やら硬貨などが詰まっていた。
証拠を突きつけられたジェイミスンたちは逃げ出そうとしたが、全員警官隊に取り押さえられた。そして逮捕され、警察署に連行された。
署内の取調室でもジェイミスンは図太い態度を続けていたが、フォイルから悪質な略奪犯には死刑が適用されることを聞くと顔面蒼白になった。