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千秋真一は、桃が丘音楽大学ピアノ科の4年生。
ピアノの演奏技術や音楽の理解力は学年で一番の俊才です。 オーケストラの指揮者になりたいという夢を持っています。
ピアノ科で最も優秀で強引な教授、江藤耕造にその力量を認められて、教授の特別選抜レッスンコース(人呼んで「江藤塾」)を受講しています。
ところが、江藤先生の指導法は、千秋から見ると、一方的・強引でワンパターンで、いつも頭にきているようです。
ついにある日、千秋は江藤先生に反抗して大げんか。特別コースから追放されてしまいます。
その日、千秋はひどい衝撃を受けて落ち込み、苛立っていたのです。
指揮科の小太りの学生(男性)が選ばれてドイツに留学することになったことにショックを受けたのです。
というのは、千秋は子どもの頃の飛行機事故がトラウマとなって飛行機に乗ることができなくなっているのです。しかも、船もだめ。
というわけで、才能と意欲はありながら、海外(本場ヨーロッパ)に行くことができないのです。 世界的な指揮者になるには、致命的な弱点です。
江藤塾を追い出された千秋の指導教授は、谷岡肇に代わりました。
で、数日後、谷岡教授の指導室に顔を出すと、そこには、先日、とんでもない出会い方をした女学生がいました。
江藤先生と大ゲンカしたした日の夜、やけ酒で悪酔いして自宅マンションの部屋の前でうずくまっていたときに介抱してくれた(?)女の子です。
その翌朝、ベートーフェンのピアノソナタ『悲愴』の美しい音色を耳にしながら目覚めると、ゴミだらけの部屋で女の子がピアノを弾いていたのです。
千秋は、部屋のあまりの汚さに驚いて外に飛び出しました。
その変な女の子が、谷岡教授の学生だったのです。
名前は、野田恵(のだめ)。
谷岡教授は千秋に対して、野田恵とともに(後輩指導も兼ねて)モーツァルトの「2台ピアノ用のソナタ」を練習・演奏することを課題としました。
のだめは一度聞いた曲はすぐに弾けてしまうという才能を持ちながらも、楽譜の理解はてんでダメ(理解しようと努力もしない)、しかも極端な練習嫌いなのです。
「なんだこいつは?」と思いながらも、千秋は、いつも楽譜も見ないで好き勝手にピアノを弾いているのだめの素晴らしい才能に気づきます。で、何とか課題をクリアできるように四苦八苦します。
やがて、のだめに感性と才能の赴くまま好きに弾かせて、千秋がその良さを活かすように伴奏=フォローする形で、みごとなアンサンブル演奏を達成します。
そのなかで、千秋は演奏中に身震いするほどに感動する「音楽の楽しさ」「喜び」を体験します。 音楽奏法に体系性や論理性を求める千秋にとっては、新鮮で深い感動なのでした。
そんなとき、学園に世界の巨匠(マエストロ)、フランツ・フォン・シュトレーゼマンが講師として訪れました。千秋は千載一遇のチャンスとばかり、シュトレーゼマンに指揮科への転科を願い出ますが、拒否されました。
シュトレーゼマンは、女好きで気まぐれで遊び屋で、とんでもない「エロじじい」です。
彼は通常の指揮科の講義のほか、選抜エリートからなるオーケストラ(Aオケ)を指揮・指導することになっていました。
ところが、それとは別に、彼自身が特別に選抜した「Sオーケストラ」を編成します。そのメンバーは、練習嫌いだがやたらに個性が強く、自己表現を求めたがる学生ばかりでした。
ひょんなことから、千秋はシュトレーゼマンの弟子となり、「Sオケ」の副指揮者を任されました。
しかも、シュトレーゼマンは途中でSオケの指揮を放り出して、千秋が正指揮者になってしまいます。 そして、学内の定期演奏会でシュトレーゼマンが指揮するAオケと勝負するはめになりました。
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