はぐれ者少年少女たちの冒険     目次
「はみ出し」「取り残され」の大切さ
      グース
見どころ
エイミー
「孤児」となった卵
エイミー母鳥になる
冒険の空に飛び立つ
空軍基地に不時着
ヴァージニアの越冬地へ!
冒険最後の挑戦
鳥類の飛翔と翼
鳥類の身体形状と機能
      グーニーズ
落ちこぼれ者たちの大冒険
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空軍基地に不時着

  父娘とカナダガンの群はそのまま飛び続けて、オンタリオ湖の上空に出た。晩秋の午後の陽が早くも傾き始める頃だった。
  オンタリオ湖は巨大な湖だ。詳しくはわからないが、オンタリオ湖を南北(または南東に向けて)に縦断する飛行ルートを取ったようだ。オンタリオ湖を南北に横切るコースの距離は長いところでは100キロメートルを超える。短いところでも、60〜70キロメートルはあるだろう。
  あるいは、湖のカナダ側北東部の岬からアメリカ側ヘンダースン湾沿いの岬に向けて、西から東に飛ぶコースかもしれない。

  それにしても季節は晩秋のこととて、まもなく夕暮れになる。そんな時間帯に巨大な湖面に飛び出したのだ。しかも、飛行経験のごく少ない少女と若鳥たちは、それほど速い飛行はできない。むしろ、鳥たちにとっては湖面近くの低空飛行の方が、いざという場合に湖面に不時着できる。
  ところが、広い湖水に上に降り立つことは水鳥にとっては安全だが、人間にとっては悲劇だ。何とか宵闇が迫るまでに対岸に到着するしかない。
  とにかく、2機の超軽量飛行機と水鳥の群れからなる飛行編隊は、夕闇が迫る時刻になってアメリカ側の陸地に達し、目の前に広がる広大な――芝生つきの――滑走路に不時着した。不時着だが、視界が広い、実に安全な場所に降り立つことができた。
  滑走路!?
  何と、そこはアメリカ空軍の基地だった。


  一方、その間、アメリカ軍空軍基地ではちょっとした騒ぎになっていた。
  対岸のカナダ領から、オンタリオ湖上空を軍用機とも民間航空機とも思われない未確認飛行物体が、空軍基地に接近してくる。速度はノロくさく軍用機ではないようだ。もちろん、無線交信が通じない。となると、警戒態勢をとりながら、戦闘機の緊急発進を準備して不慮の事態に備えるしかない。
  というわけで、空軍基地の司令部と兵員たちは、緊張しながら湖面の上空を監視し続けた。
  すると、低空で小さな軽量飛行機2機とカナダガンの群が滑走路めがけて飛来し、まもなく着陸した。
  滑走路で警戒に当たっていた兵員たちは驚き半分、好奇心半分で鳥の群と軽飛行機に近づいた。そして、奇妙な父娘と可愛げのあるガンを歓迎した。

  だが、基地の司令官は憤慨に堪えないという表情で滑走路に赴き、ガンの群と戯れる兵員たちを叱責し、そして奇妙な父娘を司令官室に連行した。
  ものものしい警戒態勢のなかを厳重な警備陣に取り巻かれながら、司令官室に呼びつけられた父娘は、怒り心頭という司令官の顔つきに恐れをなした。案の定、司令官は「まったく、とんでもないことをしてくれたものだ。この基地は、君ら未確認飛行物体の接近に対して臨戦態勢を取ったのだぞ!」と大声で、譴責を始めた。
  だが、任務上言うべきことをぶちまけたあとは、トーマスからカナダガンとともに「奇妙な編隊飛行(渡り)」をしている事情を聴取した。

  すると、「まあいいだろう。それでは、君ら父娘とカナダガンの編隊を喜んで受け入れよう。今夜はここに宿泊して、明朝越冬地に飛び立つように」と歓迎の意を表した。
  空軍基地指令官としては、奇妙な闖入者に対して威嚇をして見せたが、心のうちでは基地の兵員たちに久しぶりに緊張感ある訓練を施す好機だったと喜んでいるのかもしれない。そして、単調で面白みのない基地勤務のなかに、なかなか興味深い体験ができたことも。

  空軍基地でのハプニングは、ただちに地元のテレヴィ放送局や新聞社に連絡され、カナダからヴァージニアに向かう父娘とガンの群の話題が合衆国中に報道された。空軍としては、野鳥保護に協力し支援する立場をPRして、市民の間に良好なプレゼンスをアピールしたかったのだろう。
  司令官と参謀たちは抜け目がない。

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