はぐれ者少年少女たちの冒険     目次
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鳥類の身体形状と機能
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■■鳥類の身体形状と機能■■

  そういう翼と羽毛の形状がデザインされた個体と種だけが、飛ぶ鳥としては、厳しい生存競争の歴史のなかを生き延びてきたわけだ。恐竜から進化したのち、最も合理的な力学的設計構造を備えた種と個体だけが、生き残ってきたのだ。

  ところで同じ飛翔鳥類のなかでも、短距離の移動に適合し、狭いところでの垂直的な飛び立ちに適した翼と羽毛をもつ種もいる――スズメやムクドリ。これら鳥の形状と機能は垂直離着陸ができる戦闘機ハリアーのモデルとなった。
  ホヴァリングに適した身体形状と翼(筋肉)の構造ををもつ種もある。
  空中で飛びながらの偵察(索敵と獲物発見)を頻繁におこなう種は、尾羽が長い。ヒヨドリ、オナガ、ツバメ、ハヤブサなど。

  そのなかでも、飛翔速度を最大限にして、しかも急激な旋回能力を見につけた種は、ツバメとハヤブサだ。
  これらの翼の形状は、身体の大きさに対して翼が極端に長い。しかも翼は体側または後方に自在に折りたためるようになっている。加速の邪魔になるときは折りたたみ、ホバリングや急加速のときには翼が伸び、羽ばたきができるように設計されている。とりわけハヤブサは重力落下を利用して時速200キロメートルにもなる。
  ツバメは航続距離の長い空の旅に適した形状になっている。
  ハヤブサは早朝、縄張りを守るためか威嚇のためかわからないが、高速で上下左右に旋回を繰り返し、暴れ回るように飛翔することがある。そのデモンストレイションの後しばらくは、どんな鳥も――あのずうずうしカラスさえも――その空間には立ち入らない。

  そして、遠距離を渡る鳥の形状としては、長い首と強力な翼(筋肉)を備えている――ガン、カモ、ハクチョウ、ツル、ペリカン。これらは柔軟さを備えたコンコルド型だ。ただし、その身体は激烈な戦闘、狩猟・捕食活動には適していない。だから、植物を中心とする雑食性だ。――もちろん小魚類や節足動物、貝類をも捕食する。
  その彼らは、プレデターの餌食になりやすいので群をつくる。越冬地では他種とも一緒に大きな群衆となる。


  長距離の渡りをおこなう鳥たち(渡り鳥)の群は、「へ」の字型ないし「く」の字型の変態を組んで飛ぶ習性がある。先頭を飛ぶ個体に続く個体群は、左右2列が斜めに分かれて後方にいくほど間隔が広がる形だ。それが航空・流体力学の法則に適合しているからだ。
  鍵型の形をなす群れ=飛行編隊の先頭の個体が大気を切り裂くことによって大気厚に疎密差が生じて、より後方の個体ほど揚力と推進力を獲得できる。先頭の鳥が大気中を前に移動したために圧力が下がった空間に次の個体が引き込まれる。前方に飛ぶ加速度が与えられることになる。こうして、後ろを飛ぶ個体ほど、飛行のためのエネルギーを節約できる。
  つまり、編隊の先頭の鳥には大きな負荷がかかるが、それに続く鳥たちの飛翔負荷――エネルギー消費と体力損耗――は格段に小さくなる。そして、しばらくの間、先頭を飛んでいた個体は最後方に移動し、群れは順番に先頭の個体が入れ替わって、負担を均等化する。だから、渡り鳥のほとんどの種は、渡りでは群れをなし、鍵型の編隊飛行をすることを学びとった。
  長距離飛行では、群で行動する利点が最大限生かされているということだ。

  信州の河川湖沼は北方の渡り鳥の越冬地になる。彼らは越冬地内の短距離の移動でも鍵型の編隊を組むのを好む。若鳥たちは、編隊を組んで互いに位置を取り換え合う遊びをしている。その場合に、順番や位置の交替の規則を乱して競い合うこともある。ルールを守らないと疲労や負担が溜まりやすいことを学ぶのかもしれない。

  そういう判断力というか習性が、生得の遺伝形質なのか、それとも生後の学習による獲得形質なのか、いずれなのだろう。たぶん、両方の要素をもつと思う。
  そういう傾向に反応する形質を生まれ持った個体=種だけが生き延びたのだが、そのプログラムは生後の学習や訓練を経ないと起動しないのではなかろうか。だが、ひとたび起動すると、経験学習とともに、遺伝子連鎖のなかにたたみ込まれていたより下位のプログラムが次々と発条のように展開していくのではないか。

  けれども、どこからどこに飛ぶかについては、そしてそのための地形の目印・標識の見分け方については、親鳥たちが若鳥とともに飛ぶことで学習させるしかないのだろう。が、わずかな地磁気の変化を嗅ぎ取る能力もありそうだ。
  「どこからどこに」という判断の記憶・学習は、確率的により安全な営巣地、餌を確保しやすい場所、時季ごとの気候・気象や環境条件にかんする情報の刷り込みによるものだろう。
  学習したことを、鳥類の脳の独特のGPSや記憶装置によって空間位置情報として蓄積するのだろう。今人類がグーグルアースやグーグルマップでデータベイス化し解析しているシステムを、鳥たちは何万世代も前から習得しているのだ。

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