はぐれ者少年少女たちの冒険     目次
「はみ出し」「取り残され」の大切さ
      グース
見どころ
エイミー
「孤児」となった卵
エイミー母鳥になる
冒険の空に飛び立つ
空軍基地に不時着
ヴァージニアの越冬地へ!
冒険最後の挑戦
鳥類の飛翔と翼
鳥類の身体形状と機能
      グーニーズ
落ちこぼれ者たちの大冒険
見どころ
グーンドックス
ぼくらグーニーズ
古びた「宝の地図」
オレゴン州アストーリア
エスパーニャの没落
海辺のレストラン
地下洞窟の海賊船
大 団 円
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サンジャックへの路
阿弥陀堂だより
のどかな信州の旅だより
小諸街あるき

古びた「宝の地図」

  それにしても、グーニーズの面々は、なぜそれほど意気込んで、岬に向かったのか。
  それは、マイキーが手に入れた古い地図が原因となっていた。
  その日、マイキーの家に集まった悪ガキたちは手持ちぶさた――これといってやることが思いつかない状態――で、引越し荷づくりという口実を設けて屋根裏探検を始めた。埃臭い屋根裏部屋には、古びた家具やガラクタが押し込まれていた。

  メンバーのなかでもひときわ目を輝かせていたのは、マイキーだった。何しろ埃だらけの屋根裏なので、喘息に悩まされることになった。だが、好奇心が勝って、ひどい喘息にはならなかった。ということは、「主として心因性」の喘息らしい。
  マイキーは古い額縁のなかから、17世紀末ないし18世紀初頭の頃の地図を見つけた。地図はエスパーニャ語で記してあった。マウスはエスパーニャ語ができるので、地図の地名や説明を翻訳した――かなり恣意的に、というか勝手な思い込みを織り交ぜて。
  要するにこの地図は、その昔、ブリテン艦隊に追われたエスパーニャ系の海賊たちが財宝を隠した場所を記した地図らしい。

  その地図には、古びた新聞記事の切り抜きがついていた。記事によれば、アメリカの探検家が、アストリアの海辺で何世紀も前の海賊の財宝の隠し場所の手がかりを見つけて、探査に出かけたが、まもなく消息を絶ったという。
  莫大な金額の財宝が、近くの臨海公園のどこかに眠っているらしい。海賊が隠した財宝だ。
  それだけでも、子どもたちの冒険心をくすぐる。
  マイキーは財宝を見つければ、この住宅地を買い取り、このまま住み続ける権利を手に入れることができると考えた。そこで、面々を冒険に引っ張り出すことにした。

オレゴン州アストーリア


オレゴン州アストーリア市
西海岸北部の街で太平洋に面している

  さて、ここで、グーニーズが住んでいるオレゴン州アストーリア市の地理を考えておこう。というのは、この物語の核心ともなっている「海賊の財宝」が隠されているような場所なのかどうかということを探るためだ。
  アストーリアは、大河コロンビア川の太平洋岸の河口付近にある都市だ。川の対岸はワシントン州で、合衆国の北西の端っこだ。
  カナダまであと300キロメートル。緯度からすれば、北海道よりもはるかに北だが、海流――日本列島沿いに北東に流れる黒潮が三陸の遥か沖合いで東進し、ヴァンクーバー沖で南転してカリフォーニア沖まで達する――の影響で、比較的温暖な西岸海洋性気候帯にある。だが、年間を通じて雨が多い。

■エスパーニャの植民地帝国と海賊■
  それにしても、そんな北方までエスパーニャ系の海賊が逃げてくるだろうか。まあ、追われれば、当時の航海技術のこととて、陸地=海岸沿いに逃げては来るだろう。
  地図で見ると、コロンビア川の河口付近は入り組んだ複雑な地形で、海岸付近は森や草原湿地帯で覆われていて、海賊の財宝の隠し場所としてはふさわしい。
  17世紀に「日が没することがない海外植民地帝国」を築いたエスパーニャ連合王国は、南北アメリカ大陸から太平洋を横断して、フィリピン植民地との貿易経路を組織していた。したがって、北アメリカ――メーヒコやカリフォルニーアなど――の西岸から太平洋を横断して東南アジアに向かう航路を開拓していた。

  その頃、南アメリカ大陸の太平洋岸のエスパーニャ領植民地――ペルーやエクアドール、チーレ――では数多くの銀山が開発され、大量の銀地金が貿易航路の船舶に積み込まれていたのだ。
  何しろ大西洋沿岸にあって、カスティーリャのマドリードに向けた最大の積み出し港がある植民地には、「銀の王国アルヘンティーナ Argentina 」と名づけたほど、南米大陸では銀の産出量が豊富だった。

  ここで――どうでもいいことと言えばそれまでだが――このサイトでの国名・地名表記について、私のこだわりを述べておく。
  このサイトでは、国名・地名を――カタカナ表記では限界があるが――できるだけ現地語発音に近付けようと試みている。それは日本のマスメディアや学校教育での表記と異なっている。たとえば「メキシコ」は現地エスパーニャ語音に近づけて「メーヒコ」、あるいは英音表記では「メクシコ」と、「アルゼンチン」をエスパーニャ語で「アルヘンティーナ」などと表記している。地名では「テキサス」を「テクサス」と。
  これは「文化の国際化」に対応させたものだ。というのは、一方で「国際化」を唱えている日本のマスメディアや学校教育(教科書)での国名・地名表記法に強い違和感と疑念を抱いているからでもある。
  今日本では、小学校教育でも英語の正規科目化を目ざす段階に来ている。ところが、メディアも公教育も、相手国の国名や地名を「どこの言語が判別できないようなカナ表記」で済ませて恬として恥じない――そもそも疑問さえ感じない――態度を改める気配もない。

  私としては、かつて翻訳や通訳業務上、あるいは個人的な外国人とのコミュニケイションにおいて、そういう日本の状況下で学び育ったために相当に困惑し混乱した経験がある。
  たとえば英国を「イギリス」と表記する方式やアルヘンティーナを「アルゼンチン」と表記する方式は、ビズネスや文化での国際交流では「噴飯もの」の恥さらしと言っても過言ではない。
  こういう方式や態度を改めずに「小学校で英語を教えて国際的なコミュニケイション能力を習得させる」と意気込んでも、笑止千万でしかない。

  「イギリス」とはどこの言語だろうか。英語ではまったくありえない。おそらく、江戸時代末期に蘭学の師となったネーデルラント人たちが、ブリテン王国をネーデルラント語で「エングレースイングランド(民族) Engles 」と表記・発音し、それを耳慣れない日本人が「エゲレス」――この場合の「ゲ」は鼻濁音で、アルファベット表記では nge の音――というカナ表記に当たる訳をしたためだろう。
  100年以上前までならそれでもよかろうが、現在では、「ブリテン連合王国」とか「ブリテン」「連合王国 UK」くらいには表記すべきだ。イングランドはブリテン連合王国の1つの州にすぎないから、発音や表記の問題を抜きにしても「イギリス」は大間違いだ。というよりも、そもそも「イギリス」では、どこの国の人ともコミュニケイトできない。
  「アルゼンチン」にいたっては、もう無茶苦茶だ。西音(カスティーリャ語)なら「アルヘンティーナ」、英音なら「アージェンタイン」、仏音なら「アルジャンティーヌ」となるはずだ。せめてこの3つのいずれかにいてほしい。
  国家の名称をそんな風に教える学校教育で、国際的コミュニケイション能力を高めるためとして英語を教えても、そもそも足元の根本がズレている。まず、外国語(国名)の「正しい日本語表記」を追求すべきなのだ。日本語で正しくものごとを認識・呼称・表記できないようなレヴェルを放置して、文法もなにもないだろう!

  とはいうもの、「ギリシア」――正しい国名は「ヘレーナ」、英音では「グリース」、独音では「グリーヘン」――のように、国名の混乱が世界的に展開していて、どうにも直しようがないものもあるのだが。それでも限界を意識して、どうにかしようと「悪あがき」をすべきだろう。

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