はぐれ者少年少女たちの冒険     目次
「はみ出し」「取り残され」の大切さ
      グース
見どころ
エイミー
「孤児」となった卵
エイミー母鳥になる
冒険の空に飛び立つ
空軍基地に不時着
ヴァージニアの越冬地へ!
冒険最後の挑戦
鳥類の飛翔と翼
鳥類の身体形状と機能
      グーニーズ
落ちこぼれ者たちの大冒険
見どころ
グーンドックス
ぼくらグーニーズ
古びた「宝の地図」
オレゴン州アストーリア
エスパーニャの没落
海辺のレストラン
地下洞窟の海賊船
大 団 円
おススメのサイト
人生を省察する映画
サンジャックへの路
阿弥陀堂だより
のどかな信州の旅だより
小諸街あるき

冒険最後の挑戦

  父に励まされてエイミーは、ガンの群を引き連れて飛び立った。
  目的地まではあと40キロメートルくらいだろうか。エイミーは知恵を振り絞って、地形や目標物を見出しやすい海岸沿いに南に飛ぶことにした。カナダガンの若鳥たちを率いる母鳥の気分だったのかもしれない。

  さて、サンクチュアリーでは、環境保護派と野鳥保護団体のメンバーが、サンクチュアリーに押し入ろうとする開発業者を押しとどめながら、iミートガンの群の到着を今か今かと待ちわびていた。
  けれども、晩秋の陽差しは大きく西に傾きかけていた。
  「遅い。エイミーたちはコースを間違えたのか」と気をもむ人びと。
  ……しばらくして、北の空に小さな点が見え始めた。
  「あの子よ。ガンの群を引っ張ってやってきたわ!」
  湿原に歓声が響き渡った。
  人びとは大きな身振りや大声で、軽飛行機の着陸コースにエイミーを誘導した。
  一方、開発業者は無念の表情で敗北を認めた。
  エイミーの超軽量飛行機は、湿原脇の草原に無事着陸した。

  カナダガンの群は、ようやく到達した越冬地の上空を大きな円を描いて旋回したのち、高度を下げて沼の上に水しぶきを上げながら舞い降りた。そのまま、喜んで水面をかけ回り、水にもぐったり、羽ばたいたりして大騒ぎ。やがて、静かに水面を遊弋し始めた。
  「ここが越冬地だ!」
  カナダガンの若鳥たちの鳴き声は、そう宣言しているかのようだった。

■■鳥類の飛翔と翼■■

  私にとって、この物語で一番の面白みを感じたことは、人間がカナダガンの群の飛翔すなわち編隊飛行の訓練を教えるという点だ。
  とはいえ、鳥がどのようにして群の編隊による長距離飛行の技を見につけるかについては、この作品は詳しく描いているわけではない。何となくガンの若鳥たちは、「雁渡り」の形を習得してしまうように見える。
  じっさい、幼鳥たちはきわめて短期間に危険な中距離飛行のための技能を習得してしまう。そういう能力と習性を備えた鳥類の種だけが、自然淘汰の荒波をくぐりぬけて渡り鳥として生き延びてきたのだ。
  じつは渡り鳥の長距離飛行をめぐる運動と習性は、鳥たちにとっては本能と短期間の学習で身につけてしまうなのだが、人間にとっては科学の最高の知識をもって初めて理解できる高度な流体=航空力学テクノロジーなのだ。

  そもそも鳥の飛行という現象は、流体=航空力学にみごとに適った運動だ。そのような運動能力と身体形状を獲得できた渡り鳥の種だけが、現代まで生き延びてきた。それが進化なのだ。環境に適応できた種だけが生き延びる。
  鳥の翼の断面は、全体として、上に凸形の平べったい三日月〜半月形の形状をしている。翼の上側の弧の長さの方が下側よりもずっと長くなっている。
  このような形状で大気(流体)のなかを進むと、翼の上側を流れる大気の方が下側よりも、同じ時間により長い距離を動くことになる。上側の大気の速度の方が大きい。
  流体力学の法則として、速度と圧力(密度の変移)は反比例する。したがって、翼の上側の大気の圧力は小さくなり、下側の圧力が大きくなる。すると、翼には上向きに押し上げる力、揚力が発生する。
  断面の形は、進行方向の前側が分厚く曲率も大きくなっている。これは、大気を切り裂いて進むときの衝撃に耐えるとともに、揚力の方向を後ろ側の下側から前側に対して斜め上向きに押し出す力を強めることになる。つまり、揚力を前に進む方向に強めるのだ。
  そして、大気中の移動速度が大きいほど、全体としてこの揚力は大きくなる。翼全体の形が揚力、すなわち飛翔力を生み出す構造になっている。
  しかも、翼を構成する1枚1枚の羽根(羽毛)の断面の形状もまた、翼の断面と同じになっている。そういう形状はとりわけ風切羽に顕著だ。
  したがって、翼は全体の構造としても、部分部分としても、きわめて合理的に飛翔するようにデザインされている。

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