さてさて、グーンドックスに住む少年たちは、自分たちを「グーニーズ」と呼んでいる。いく分は自嘲を込めながら、他方ではいっぱしの「悪ガキ連」を気取って、仲間意識と連帯感を誇示するためだろう。
グループのメンバーは、
まず一人目は〈マイキー〉こと、マイケル・ウォルシュ。
いつも喘息で悩まされている。そのため、喘息発作を抑えるための薬剤入りパイプをいつも携帯している。ひどいストレスを受ける――立場が悪くなる――と、とたんに喘息発作に陥る。だが、抜け目のない賢さを持っている。
次のメンバーは〈大口叩き〉こと、クラーク・デヴロー。
Mouth とは「偉そうなことを言う」とか「ほら吹き」という意味。ふだんは強がっているガキ大将タイプで、痛烈な皮肉屋だが、それは気の弱い面を隠すためでもあるらしい。
3人目は〈太っちょ〉こと、ローレンス・コーエン。
食いしん坊で、いつも何か食べたがっている。そのため、肥満気味。身体は太いが気は小さい。かなりの怖がりで弱虫。しかし、食べ物を手に入れるためには、食欲に刺激されて無類の勇気が湧くらしい。というよりも、目先の食べ物に惹きつけられてしまって、普段は怯えるような危険が見えなくなる。
4人目が〈デイタ〉こと、リチャード・ワン。
中国系移民の子ども。機械仕掛けおたくで、いつも何かしら機械仕掛けを考えている。この物語では、いたるところで、アルゴリズム仕掛けが登場して、物語の展開の鍵になる。その意味では、物語の狂言回し役。
最後が〈ブランド〉こと、ブランドン・ウォルシュ。
マイケルの兄。本当はグーニーズのメンバーではない。だが、母親からマイキーの「お目付け役」をさせられているので、いつもグーニーズの面々が引き起こす騒動に巻き込まれている。
さて、郡刑務所からの脱走事件のあったその日、グーニーズの面々はすっかり落ち込んでいた。
理由の1つ――ただしその最大のもの――は、彼らの居住区がカントリー・クラブに売却されることになったため、それぞれの家族があちこちに移住しなければならなくなったこと。つまり、グーニーズの面々は別れ別れになるということだった。
それで、最後の週末を、ブランドが運転する車に乗ってグーニーズのメンバー全員で「ちょっとしたドライヴ旅行」にしけこむつもりだった。だが、ブランドは運転免許の試験に落ちてしまった。そのために、最後のお楽しみの機会を失ってしまった。それで、落ち込んでいた。
これが2つめの落胆の理由だ。つまり「弱り目に祟り目」の状態にあった。
しかも、天候は小雨模様で、気分までグレイになっている。
いつものとおり、マイキーのもとにマウス、チャンク、デイタが集まって来た。マイキーの母親は、ブランドンにいつものようにマイキー――ということは。すなわちグーニーズの悪ガキども――の監視を押しつけた。
とはいえ、彼らは、グーニーズ最後の週末を家のなかでおとなしく過ごすつもりはない。
「お目付け役」ブランドの目を盗んで、というよりも、ブランドを罠にはめて、4人は家を抜け出して、自転車で岬に向かった。こうして現代版『宝島』の物語が転がり出す。