《犯罪》の認識論 目次
犯罪捜査の認識論
取り上げる映画作品
私たちの視座
オックスフォード連続殺人
  ヴィトゲンシュタイン
  事件の実体を隠すために
  連続事件の舞台 その1
  連続殺人の舞台 その2
  招き寄せられた惨劇
  マーティンが見出した真実
認識論をめぐる論争
カオス(ケイアス)
  増えていく死体
  背後に潜む策謀
  高跳びするコナーズ
犯罪(捜査)と認識論
一般自然科学と数学
後追い的な真理への接近
ピュタゴラス教団について

おススメのサイト
英国のエリートに関連する物語
炎のランナー
英王室がらみの物語
バンクジョブ
ガイ・フォークスがらみの物語
V・フォー・ヴェンデッタ
ブ ロ グ
評論「シン・ゴジラ」
信州の旅と街あるき

カオス(ケイアス)

  この作品は、合衆国ワシントン州シアトル市警察内部でのコンゲイム(騙し合い)の物語だ。
  外見上、無秩序で無関係のできごとの連鎖――混沌:カオス――のなかに一定の法則や秩序が貫かれるという視点で、事件の事実経過と若い刑事の捜査過程が描き出される。
  『オクスフォード連続殺人』と同様、これまた犯罪捜査を撹乱するようなできごとの連続・連鎖のなかに、犯罪の首謀者と動機を読み取ろうとする捜査官の苦闘が描かれる。犯罪をめぐる捜査=認識活動が――主犯がたくらんだ偽装や粉飾がもたらす――外見上の混乱や無秩序によって、どのように妨げられるかということを描いている。
  物語は悲劇的な事故から始まる。

◆雨中の橋での悲劇◆
  シアトル市内で黒人強盗による拉致事件が発生した。
  西岸海洋性気候に特有の大雨のなか、市警の捜査官(刑事)ジェイスン・ヨークとクエンティン・コナーズは逃亡する犯人が運転するRV車を追跡していた。拉致犯が運転するRV車は、湾を横切る橋の上で、停止していた工事車両に衝突して横転した。RV車から脱出した拉致犯は銃で武装していて、人質の若い女性を楯にとって、迫り来るヨークとコナーズに対峙した。
  2人の刑事は犯人に投降を迫った。
  ところが、ヨークの銃が暴発して人質の女性を撃ち倒してしまった。コナーズは犯人に何発もの銃弾を撃ち込んだ。犯人も女性も即死だった。

  市警の内部監察課はこの事件を捜査糾問して、ヨークとコナーズを厳しく弾劾し、ヨークは懲戒免職、コナーズは数週間の停職に追い込まれた。というのも、この2人の強引な捜査方法には、これまで警察内部はもとより多くの市民や司法機関からクレイムが出されていたからだ。
  違法ぎりぎりの捜査手法のために彼らが押収した証拠物件が裁判で採用されずに、容疑者に有利な判決が何度も出ていた。そのため、市警察としては、このさい「厄介払い」をしてしまうことにしたようだ。

■銀行襲撃事件 コナーの復帰■

  それからしばらくして、市内のWNグローバル銀行が数人の強盗団に襲撃される事件が発生した。首謀者は、警察を追われたヨークだった。
  真昼の盛りに銀行を襲ったヨーク――ローレンツと名乗る――たちは、行内に合わせた客と銀行員(警備要員を含む)40人ほどを人質にとって立てこもった。そして、警察側の交渉窓口(現場責任者)として、停職中のコナーズを指名した。
  市警の強行犯課長マーティン・ジェンキンズ警部は、強盗団の要求を受ける形で、現場の指揮官にコナーズを充てることにして、シアトル市警に転任してきた若い捜査官、シェイン・デッカーをともなって停職中のコナーズの住居を訪れた。

  ジェンキンズとしては、犯人たちの要求を飲むのは癪だが、何かあって銀行強盗事件が紛糾すれば、問題行動の多いコナーズを「生贄」に差し出して責任を取らせ馘首し、庁内政治での窮地から逃れるつもりだった。
  ところが、最初に銀行に現場指揮官として駆けつけた刑事バーニー・カロは憤慨した。というのも、清廉潔白なカロは、コナーズをひどく嫌っていたからだ。
  だから、拉致事件の悲劇をめぐる内部監察においても、ヨークとコナーズの過去の不祥事や乱暴を暴く証人となった。捜査手順の規則を守らず、違法ぎりぎりの捜査をおこなう風潮を市警から一掃しようと考えていたのだ。
  それなのに、銀行襲撃事件の現場指揮から自分を外し、強盗団の要求を飲んでコナーズを復帰させることには、大いに不満だった。

  ともあれ、コナーズが現場指揮官として着任した。
  コナーズを補佐する副官は、すでに銀行を取り囲んでいるSWATの隊長ヴィンセント・デュラーノだった。
  強盗団は警察側に電話を入れて、コナーズの復帰を確認したが、それだけで何の要求もしてこなかった。こうして、事態はこう着し長引く様相を示し始めた。長引けばリスクが高まるという判断で、SWATは吸収突入による人質解放を計画して段取りを取り始めた。突入準備は着々と進んだ。
  だが、その動きを強盗団も読んでいた。彼らはすでに銀行警備要員1人を射殺して殺人を犯していた。
  強盗団は銀行員(男女)2人を選び出して逆さ宙づりにしてうえに、SWATの突入に備えて衝撃爆薬――火力を抑えながらも大きな衝撃波を起こす爆薬――を仕かけた。
  その罠に飛び込む形でSWATは銀行の扉に接近した。

  そのとき、コナーズが突入にストップをかけた。だが、衝撃弾は炸裂して、銀行の内部からの強烈な爆風で扉は吹き飛び、SWAT隊員数名が吹き飛ばされた。警察車両も被弾して爆発炎上した。
  その直後に人質となっていた人びとが、我勝ちに飛び出してきて逃げ惑い、大混乱となった。その混乱に乗じて、逃げ出す人質に紛れて犯人たちも逃亡した。
  結局、警察はもぬけの殻の銀行内に入り込んだが、犯人たちを取り逃がしてしまった。

  とはいえ、コナーズの指揮には何の落ち度も逸脱もなかったので、引き続き彼が事件捜査と容疑者の追捕を指揮することになった。
  それにしても不可解なのは、銀行では現金や有価証券類、貴金属は一切手をつけられていなかったということだった。何のために強盗団は銀行を襲撃したのか?

前のページへ || 次のページへ |

総合サイトマップ

ジャンル
映像表現の方法
異端の挑戦
現代アメリカ社会
現代ヨーロッパ社会
ヨーロッパの歴史
アメリカの歴史
戦争史・軍事史
アジア/アフリカ
現代日本社会
日本の歴史と社会
ラテンアメリカ
地球環境と人類文明
芸術と社会
生物史・生命
人生についての省察
世界経済
SF・近未来世界