マッキー自身は幸運に見舞われた。が、ジューンはついに亡くなってしまった。
ジューンのためにネヴァダの砂漠に出かけたことで、マッキーは妻との関係がこじれてしまった。
患者として、また1人の人間としてのジューンとの絆を深め、また医師そして友人としての誠意を見せようとしたために、これまで絆を築いてきた妻とシックリいかなくなる。人間とは、家庭とは難しいものである。それぞれに、まっとうな言い分があるから。
少し時間を戻すが、
マッキーは手術前の不安な気持ちを妻に理解してもらおうとしたが、「あなたは私よりもジューンを選んだんだわ」と突き放されてしまった。孤独感に苛まれて、マッキーは夜中にジューンの家を訪ねた。不安な気持ちをジューンに打ち明けてみようかと思った。
だが、ドアを開けたジューンの孤高で毅然とした姿、しかも自分は死の淵に立っているのに、マッキーの憔悴した顔つきを見て相談に乗ろうとする姿を見て、マッキーは何も言えなくなって、そのまま家に上がらず帰ってしまった。
もっとひどい苦しみに耐えている人もいるのに、と思ったのか。それとも、妻との絆が危うくなったことをどう伝えるかわからなくなったからか。
マッキーが帰ったあと、ジューンはマッキー宛の手紙を書いた。自分の心を見つめるようにと、マッキーを励ますために。
だが、翌日、ジューンは急激に体長を悪化させて昏睡に陥り、そのまま息を引き取ってしまった。
そのあとにマッキーがやって来た。ジューンの容態の急変の知らせを受けて。
マッキーは、ジューンが自分宛の手紙を書いてくれたことを知って、自分の悩みだけに浸っていたことを深く後悔した。そして、体調が悪化していたジューンを真夜中に訪ねて、しかも、手紙を書くための無理をさせてしまった。
そのことが、体長の悪化の一因になったのではないか。ジューンの死期を早めたのは自分ではないか、と。
それでも、ジューンの手紙を読むうちに、心が落ち着いてきた。
ジューンは自分の人生の終末について、苦しみ悩みながらも、潔い覚悟をしていた。心は前を向いていた。そのことがわかり、苦しみがいく分やわらいだ。