刑事フォイル第2話 目次
第2話 臆病者
  犯罪捜査のトリオ
  親ナチス団体の暗躍
  深刻な戦況
  新ナチ・反ユダヤ主義
  ミルナーの苦悩
  のどかな田園風景・・・
  フライデイ・クラブ
  アイザック・ウールトン
  「国民祈禱の日」
  殺人事件発生
  デイヴィッドへの容疑
  ウールトンの正体
  ミルナーとスペンサー
  軍情報部の内偵
  イーディスの後悔
  ファシストの手管
  アーサーの自殺未遂
  手紙の隠し場所
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アーサーの自殺未遂

  その深夜、ホテルのスタンリーの急報で昏睡状態の父親アーサーが病院に担ぎ込まれた。緊急処置の結果、一命を取りとめたが、何日かの入院が必要で、しばらく警察による事情聴取の応じられる状態ではなかった。
  警察は、マーガレット殺害のあとだけにアーサーが命を狙われた可能性があると見て、捜査をおこなったが、殺人未遂の可能性はほとんどありそうもないことが判明。さらに、病院での検査の結果、アーサーは睡眠薬と強いウィスキーを同時に飲んだために、意識不明になったことがわかった。
  つまり、自殺未遂だったのだ。
  フォイルは、ベッドで意識不明になっているアーサーを発見したスタンリーに事情聴取をおこない、ベッドの近くに遺書のような手紙がなかったか尋ねた。だが答えは否だった。

  しばらくしてフォイルは意識を回復したアーサーに対して質問した。
  「なぜ死のうとしたのかね」
  「妻のマーガレットを失って、生きる気力を失ってしまったからだよ。彼女は気性の激しい女で、敵をつくりがちな女だったが、それでも私は愛していたんだ。
  26年間も一緒に暮らしてきたんだよ」
  ところが、そういうアーサーの言い分は、先頃、マーガレット殺害直後の捜査でスタンリーから聞き出した妻との関係とずい分と違っていた。
  マーガレットは専制君主然と振る舞い、夫と息子はまるで奴隷のように言いなりになっていたというのだ。
  またスタンリーは、アーサーは長らく止めていたパイプでの喫煙をするようになったとも、ウールトンが拳銃を隠し持っていることを告げても無視していたとも語っていた。
  フォイルには殺人事件の動機と構図が見えてきた。


  そこでまず、スタンリーを問い詰め、昏睡したアーサーの傍らにあった遺書を破棄したことを認めさせ、遺書の内容を聞き出した。
  翌日、フォイルはアーサーと対決した。
「あなたがマーガレットを射殺したのですね」
  はじめのうちはしらを切っていたアーサーは妻の殺害にいたる経過を語った。
  自らと息子を言いなりに支配してきたあげく、ホテルの財産権と経営権の半分をスペンサーに遺贈する意思を表明した遺書を書いたことを知って、一気に憎悪が膨れ上がり、殺意に変わったのだと。
  こうして、息子や周りからは「妻に怯える臆病者」と侮蔑され続けてきた屈辱を一気に晴らそうとしたのだという。

  ところで、アーサーが自殺を試みた理由はこうだ。
  彼はフライデイ・クラブに妻とともに参加しているうちに、会員たちが口をそろえて「1週間以内にドイツ軍が英国に侵略してきて、法秩序も警察も壊れてしまう」と語り合っているのを真に受けるようになった。だったら、今マーガレットを殺しても、ドイツ軍侵攻の混乱のなかで捜査を受け、殺人罪に問われることもないだろう、と思料するにいたった。
  そこで、ウールトンの銃を盗み出して妻を殺した。だが、1週間経過してもドイツ軍の侵攻はない。このままでは犯罪捜査が自分にもおよび、殺人罪で裁かれてしまう。そうなれば絞首刑だ。だから、絶望して睡眠薬とウィスキーをあおったのだ。

  あの夜、アーサーは妻の横に座りパイプに硝酸カリウム――ホテルの料理用肉の保存のために使用していた――を詰めて喫煙した。そして、ホテルの全室の照明器具を点けておいて、一定時間内に遮断フューズが飛ぶように細工しておいた。
  数十分後に停電が起きると、点火したパイプを妻の近くに置いて部屋を出て拳銃を手に取って発射した。
  マーガレットの身体の位置は、発光するパイプで割り出したのだ。硝酸カリウムは燃焼で強く発光する火薬なのだ。

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