フォイルは、屋敷に侵入した男が短時間でアメリカ製の金庫を破ったという犯行の手口から、ハリー・マーカムの容疑が濃いと睨んだ。そこで、ミルナーにハリーを事情聴取してみるように助言した。
一方、マーカム家ではその朝、ルーシーが兄を問い詰めていた。昨夜半に出かけたまま長い時間帰宅せずに夜更けに帰宅したハリーを「また悪い仲間に加わって窃盗を働いたのではないか」と疑ったのだ。
執拗な詰問にハリーは、「友人に頼まれて断り切れず、仕方なくある屋敷に盗みに忍び込んだ」と打ち明け、盗み出した物で貧乏から抜け出すことができるかもしれないと語った。
妹は、兄が何かを盗み出したらしいことを知った。
ルーシーは、兄が左肩に傷を負っていることに気がついた。シャツを脱がせてみると、左肩に数十発の散弾が突き刺さっていた。ルーシーは鉛弾を抜き取って治療した。
ハリーは「盗品は誰にも見つからないように、誠実で働き者の友人に預けてある」と告げた。
その日、ハリーはスティーヴン・ベックを裁判所庁舎内の弁護士ギルド・ホールに訪ねて、ウォーカー邸からの書類の盗み出しに失敗したことを報告した。
「侵入したが、すぐに家人に気づかれてしまい、何も取らずに逃走するしかなかった」と。
だが、ベックはハリーの言い分を信じることができなくて問い詰めたが、ハリーは言い分を変えなかった。
一方、ハリーの留守中にミルナーはマーカム家を訪れ、ルーシーから話を聞いた。ルーシーは、ミルナーがフォイルの部下だと知ると怒りを露わにして、
「ハリーは無関係です。なのに、また虚偽の証拠を捏造して逮捕するつもりなんでしょう」と非難した。ということは、ハリーの妹のルーシーとしては、前回の裁判では兄が実際には盗み出さなかった物品が証拠として提出されたと認識しているわけだ。