さて、フィルビーの隊は樹林帯を抜けて草原に入ろうとしたそのとき、草原に隠れていたデヴリンが率いる独軍側グループが奇襲をかけて、フィルビー対全員を捕虜としてしまった。そして、無線機や制服を奪い取ってしまった。
そんな事情を知らないハーコート准将は、フィルビー帯からの無線連絡がないことに苛立って、軍用車でその隊の配置地点に向かおうとした。しかし、軍用車のエンジンは故障したらしく動かなかった。
准将の焦燥を見かねたフォイルは、サマンサが運転するクルマに准将を同乗させて、目的地に行くことにした。
ところが、目的地の手前で英軍側の兵員たちが検問体制を敷いていた。独軍側の侵攻を阻止するために気の利いた検問体制をとったものだと感心しながら、准将はクルマを降りてバリケイドに近づいた。そのとき、敵側の指揮官役のデヴリンが現れて、「准将、あなたはわれわれの捕虜になりました。ゲイムはわが軍の勝利です」と告げた。
愕然としたハーコートは、デヴリンに噛みついた。
「こんな奇襲攻撃は計画にはなかった。それに君らが英軍側の制服を着ることも、計画上許されんぞ!」と。
デヴリンは反論した。
「実戦では計画にはないことばかり起きます。想定外の奇襲に備えるのが作戦演習の要諦です。
准将、このあとのあまた時間はあのパブで一杯やるのはいかがですかな」。
怒りが収まらない准将はフォイルに審判としての意見を求めた。
「准将、こうなっては手の施しようがありません。デヴリンたちの勝利です。
ああ、それから一言。今はパブは営業時間外です。時間外に飲むのは法令違反ですよ。 では、私は仕事に戻りますので、これで……」 と言ってフォイルはクルマで立ち去った。
おりしもその頃、ハリーは何者かに拳銃を突きつけられ、2度の空砲の後、実弾で頭部を撃ち抜かれて即死した。
草原で拘束されていたフィルビーたちは、およそ30秒ほどの間隔を置いて3発の銃声を聞いた。フィルビーは見張りの兵員に命じた。
「今の銃声は、実弾が禁止されている区域からだ。交戦が想定されていない場所だ。ただちに現場に駆けつけて調査をする必要がある。
上官として命ずる。ただちに私たちを解放しろ!」
というわけで、銃声を聞きつけた防衛隊のメンバーがあちこちからハリーの殺害現場に駆けつけ、ただちに惨事を警察に通報した。
フォイルとミルナーも駆けつけて、現場の捜査と集まった減員たちからの聴取を始めた。
ハリーの額には火薬による焼け焦げがあった。頭部に接するほどの近距離から銃撃されたのだ。3発の銃声がしたということから、2度は空砲で、最後に実弾が発射されハリーの命を奪ったことがわかる。