ホルニスト、それは、粗雑なネオファシズムのような暴力的な権威主義思想に駆り立てられている軍事組織だ。
その首領と軍団による住民支配=抑圧は、各地の住民共同体を徹底的に分断し、孤立させるという手法によっていた。こうした環境に住民集団を追い込んではじめて、軍団の暴力の行使や威嚇は、支配する権力として振る舞うための絶大な効果を獲得することができるのだ。
そこには、統治者としての権威や正統性、「見せかけの慈悲」「恩顧や恩恵」の欠片すらない。直接的な暴力だけだ。
住民集団を孤立感や恐怖に陥れて統制する、この軍団にとって、郵便配達員たちが組織化し始めている連絡網は、各地の共同体のあいだの連帯や連携、情報交換をもたらすもので、危険極まりない動きだった。郵便サーヴィスのネットワークは、軍団の批判勢力、対抗力に成長するはずの危険な存在だった。
ゆえに、郵便配達員たちは、ホルニストによる執拗な妨害、さらには攻撃と殺戮、破壊攻撃の的になっていった。ファクトリーから遠方の集落への巡回に向かった若者たちのうち、消息を絶ってしまう者たちが続出するようになった。
ついにポストマンたちは反撃を試みる。
仲間のなかに、1970年代にベトナムで戦い、その後陸軍の宇宙開発エンジニアとして宇宙船の設計に携わった元将校で、今は70歳に近い爺さんがいた。ポストマンは、彼を作戦の顧問=指南役として、ホルニストの小隊を全滅させてしまった。
けれども、それはホルニストの残虐な報復を呼び起こしてしまった。
ホルニスト軍団は、郵便配達員狩りをおこない、彼らに共鳴・協力する共同体住民をさらに酷く抑圧するようになっていく。ついにベトゥリヘムはパインヴュウを武力で制圧して、「ポストマンへの協力者」として十数人の住民を選び出し処刑した。そして、毎日、郵便配達員の若者が何人も殺されていった。
ホルニストは、郵便サーヴィスのネットワークが組織され、機能し続ける限り、この殺戮戦を続けるつもりだった。
犠牲者が増え続ける状況に直面して、ポストマンは郵便サーヴィス組織の解散を決意した。ファクトリーに集まった若者たちの前で、ポストマンは大統領からの指示書を読み上げた。
「これ以上の犠牲者を増やさないために、やむを得ず、郵便サーヴィスを解散する」という内容だった。これは、ポストマン自ら記した手紙だった。
ポストマンは、若者たちに、ただちにこの場を離れ、安全なところに身を潜めるように指示した。そして、自ら郵便組織解散の通告書をホルニストの首領に配達するつもりだった。けれども、フォードが、この最期の配達を買って出たため、ポストマンはアビーとともに逃亡することにした。