エネミー・オブ・アメリカ 目次
NSAの暴走
原題について
見どころ
あらすじ
議会委員長の死
野鳥観察カメラの映像
監視システムとしてのIT
巻き込まれた弁護士
クレイトン担当の事件
家宅侵入と監視
信用失墜作戦
人狩り作戦
映像デイタの行方
ブ リ ル
ブリルの隠れ家
必死の逃走
攻守逆転
落とし穴
起死回生の大バクチ
  NSA対マフィア
結   末
つけたし 余計な話題
  「隣の腕白兄ちゃん」
  〈強硬な愛国者=卑劣漢〉
  監視テクノロジーの凄さ!
  IT通信暗号の認可とNSA
  国家装置とマフィアの等置
  なぜ国家装置は膨張したがるのか
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野鳥観察カメラの映像

  数時間後、貯水池にハマーズリー議員が乗った車が沈んでいるのが発見された。報道陣が押しかけた。目下の調査では、議員が運転中に心臓発作を起こしたまま、湖水に飛び込んだらしい、とメディアは伝えた。
  ところが、レイノルズがハマーズリーと会っていた水辺の対岸には、ヴィディオカメラが設置してあった。自然観察家ダニエル・ザーヴィッツが水辺の野鳥の生態を撮影するために仕かけたカメラで、その対岸方向(岸辺や水面)物体の動きがあれば光学センサーがはたらいてカメラの撮影が始まり、数分間、映像を記録する設定になっていた。
  ハマーズリーやレイノルズの動きがセンサーに反応してカメラのスウィッチがONになったため、会談決裂から殺人にいたる経過の一部始終が撮影されていた。
  レイノルズが公園を去ってから数時間後、ダニエル・ザーヴィッツがカメラのカセットテイプを取りに来た。ザーヴィッツは、事故報道に殺到したメディア陣を尻目に、カメラのテイプを取り換えると、RV車で帰っていった。

  だが、メディア陣に混じって、その様子を監視している男がいた。
  レイノルズは、事後の事態に備えて現場にNSAのエイジェントを配置していったのだ。エイジェントは、ザーヴィッツの動きを双眼鏡で監視していた。エイジェントは、カメラが殺人場面を撮影した可能性が高いことをNSA本部オフィスのレイノルズに報告した。そのカメラのテイプを抜き取った男が乗り込んだRV車のナンバーと走り去った方向も。
  レイノルズはただちに直属の部下を集めて、ザーヴィッツの追跡・捕捉作戦を指示した。というのも、市民監視法案が成立した場合に備えて、監視と追跡を実行する組織や、必要に応じて捕縛や抹殺という「汚れ仕事」を担う暴力装置をすでに準備しておいたからだ。ザーヴィッツを追跡捕捉して、映像テイプを奪取し、場合によっては抹殺するためには、この組織を動かせばいいのだ。
  レイノルズの腹心の部下たちは、NSA(ペンタゴン)の情報収集・解析部門のスタッフを動員して、監視衛星を制御してザーヴィッツの車が乗り入れた道路を走査させた。そして、デイタベイスから車のナンバー情報を引き出して、持ち主が自然観察家のダニエル・ザーヴィッツであることを突き止めた。彼の住居や交友関係、仕事での関係者などの情報も把握された。

  さて、DC市内の住居に戻ったザーヴィッツは、さっそく映像をモニターにで再生したみた。すると、渡り鳥の映像のあとに、カメラの対岸で起きた会見と殺人場面が映し出された。殺された人物は、先ほどのニュウズで突然の事故死が報道されていた連邦議会の情報委員会の委員長だった。その議員は、運転中の心臓発作で水辺に転落して死亡したというのだ。
  だが、この映像は、議員の死が謀殺によるものであることを証拠づけていた。
  ザーヴィッツはただちに映像が写し取った事実について、反権力・反戦活動の組織の雑誌の編集者に電話をかけて知らせた。編集者は映像をすぐにMCD(マイクロ・コンパクトディスク)にコピーして送るように求めた。インターネットでは当局によって監視されているからとのことだった。そして、危険な映像を入手したので、すぐにも身の回りに危険がおよぶだろうから、警戒するように警告した。
  ザーヴィッツが窓から近辺を見下ろすと、尾行の車らしいハッチバック車があった。実際、NSAのエイジェントたちは、ザーヴィッツの部屋に迫っていた。   ザーヴィッツは映像を媒体にコピーすると、窓から屋根伝いに逃げ出した。直後に部屋に踏み込んだエイジェントたちは、銃を構えて追いかけた。

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