不機嫌な赤いバラ 目次
品位と孤高、プライドとわがまま
原題と原作
見どころとテーマ
あらすじ
連邦財務省の・・・
「独立国家」としての州
合州国の国家的統合の進展
連邦での財務省の役割
振り回される警護班
ダグラス・チェズニク
現職大統領
テレサ・カーライル
人生の黄昏を迎えて
女心は墓場まで
ぶつかる個性
大統領の命令
テスの病状と悩み
ひとりの人間として
政権の思惑とテス
誘拐事件
テスの独擅場どくせんじょう
後 日 談
官僚はつらいよ
毅然と生きる老婦人の物語
マダム・スザーツカ
大誘拐

連邦での財務省の役割

  連邦中央政府のなかで軍事、司法、財政、通商などの省庁諸部門は、互いに競争しながら、権限と権威を北アメリカ全域に拡張・浸透させようとしていった。それぞれが、固有の官僚組織や財源をもち、違反脱法の規制のために、自前の裁判管轄権や訴追権、罰令権、警察権を保有し、それを担う担当組織をつくり上げていった。
  ことに財務省は、通貨の発行やその偽造の禁圧、連邦税の課税徴税の管理、銀行や金融機関の規制について、強力な権限と権力組織を保有していた。州ごとの管轄権の制約を超えて、通貨偽造犯罪の捜査や脱税犯の追及、金融犯罪捜査、準備貨幣や貴金属の輸送などをめぐって、財務省独自の刑事警察組織、捜査・検察組織、武装警護組織を組織・運営していた。

  なにしろ、銃器保持の自由が認められている社会なのだ。捜査や証人の保護や護送、貴金属の送金の護衛、業務関連の要人の警護など、財務省は最強の物理的強制力を掌握していた。
  ところが、通常の刑事警察はかなり分権的で、各州でも市や郡という行政単位=管区ごとに独自に組織されていた。となれば、連邦政府から見ての要人の警護は、中央政府のなかでもすでに最有力の武装組織を保有・運営している財務省の専門部門に委ねることになる。
  アングロサクスン系の政治共同体では、慣習法や実務的な成り行きを積み上げながら、法制度や政治制度が形成されていく。とにかく、社会にとって必要な機能は、それをいち早く担うことができる組織が管轄し、権能を獲得していくことになる。
  というわけで、連邦政府の要人警護は、長らく司法省のシークレットサーヴィスが担い続けることになった。

  財務省の経済事犯捜査の機動専門班として有名なのが、アンタッチャブルで、19世紀末から1930年代まで、脱税や酒税法違反(ことがらの性質上、マフィアや闇の組織暴力が関連して)の捜査と取締りに辣腕をふるった。
  だが、状況に即応して行き当たりばったりに構築してきた国家装置の諸部門は、連邦諸州に対する中央国家の統制権力=ヘゲモニーが確立していくと、より合理的アカウンタブルで効果的な統治システムにするために錯綜重複していた組織や権限が整理・調整されていくことになった。
  というしだいで、刑事・行政・経済をめぐる連邦犯罪の捜査・追捕の権限の多くは、だんだんに司法省やFBIに移されたが、特殊警護のシークレットサーヴィスは財務省に残されたし、通貨偽造や脱税、金融犯罪などについても捜査訴追機能も維持されてきた。
  ところが、2001年、合州国国土安全保障省が設立され、要人警護サーヴィスは財務省からこの省に移管された。

  この映画は、その10年前の作品だから、財務省の警護部門が主役の一角を担っている。

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