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映像ドラマでは描かれなかったトピックとして、千秋真一と母の実家、三善家との関係がある。
ドラマでは、千秋真一は富豪の一族で、金には不自由しない立場にあるという設定になっている。が、具体的にどうなっているか、親族関係とか金の出所についてはほとんど説明がない。
ただ母親が実家の財閥コンツェルンのなかで、パリを拠点に若手の音楽家を育成する奨学制度を運営するフィラントゥロピー事業財団の理事長をしていることが描かれるだけだ。
そのことで、母の実家である三善家が飛び抜けた大富豪、企業家の家門であるということは推察できる。
原作では、千秋の母親の実家、三善家は、IT産業を中核として中堅の世界企業を経営する家系らしいことが示される。この企業グループ=コンツェルンのCEOは三善竹彦で、千秋の母の弟だ。
彼にいたく気に入られている千秋は、かなりの金額の援助――学費・生活費・そのほか――を受けている。
三善竹彦は、真一の音楽の才能もさることながら、その知性や理想に直進する判断力や行動力に期待を抱いていて、あわよくば、自分の後継者に据えたいと考えている。
そのため、竹彦の息子、俊彦は自分の居場所を見失っている。
竹彦は、父親つまり真一の祖父の死後、財閥の総帥の地位を引き継いだが、創業者の父と自分を自ら比べて自意識過剰になっている、だから焦っている。
竹彦は、創業者2代目としてのコンプレクスを抱き、自分を実態以上に大きく見せようとして、企業組織のなかでも、家族=家庭のなかでも、かなり無理をしている。それゆえ、家族に対して心を開くこともなく、どこかひどく余所余所しいので、家族は分裂しかけている。
一族の総帥、竹彦(真一の母)の父親が存命の頃は、家庭には音楽や芸術があふれていて、家族のメンバーは互いに強く結びついていたのに、それが失われてしまった。
俊彦も妹の由衣子も、父親との心のギャップに悩み、好きだった音楽からも逃げがちになっている。
金持ちの優等生型人間の集団=家族は、それぞれが考えすぎ悩みすぎて、「心のままの次の一歩」が踏み出せずにいる。そのため、家族関係はぎくしゃくして崩壊しかけている。
そんなところに、千秋は「のだめ」を連れて「里帰り」することになった。
真一は、その圧倒的な音楽の才能と素養を見せつけ、「のだめ」はその直情径行の言動や天真爛漫な行動スタイルで、この凍結しかけた家族関係を暖め直し、家族の絆とか「心のままに、まず動く」ことの大切さ、音楽芸術の癒しや感動を注入して、「家族の再建」をもたらす。
眠れない夜更けから未明にかけて、2人はエルガーの作品でピアノとヴァイオリンの協奏をおこない、三善家の3人に圧倒的な感動を呼び起こした。
ことに「のだめ」は、三善家の人びとに強い印象を刻印する。
それはおりしも、真一が三木清良とともに新たな学生オーケストラを組織しようと計画していた頃合いだった。