ショーシャンクの空に 目次
原題と原作について
見どころ
あらすじ
冤罪で終身刑
ショーシャンク刑務所
暴君所長とその取り巻き
エリス・レッド
専門知識を見込まれる
ポスターとチェスの駒
図書係の仕事
信頼と友情の絆
ブルックス老人の死
図書施設の承認
空に響く美しい歌声
「営利事業」となった刑務所
「真犯人」の情報
脱  出
翌朝、刑務所では
脱獄と痛烈なしっぺ返し
レッド、アンディを偲ぶ
レッドの出獄

ポスターとチェスの駒

数日後、アンディの監房の壁には、リタ・ヘイワースのポスターが飾られることになった。
  やがてアンディの「退院」の日がやって来た。レッドは仲間に、アンディを温かく迎えてやろうと呼びかけた。仲間たちは、アンディの趣味、チェスの駒づくりのために、刑務所内で石材の収集を始めた。
  復帰したアンディが監房の戻ると、たくさんの石のかけらが積まれていた。
  その日から、アンディは熱心に駒づくりをすることになった。
  それからしばらくして、ウォ−デン所長は、受刑者監房の抜き打ち検査と見回りをおこなった。受刑者たちが、監房に「禁制品」や「危険なもの」を持ち込んでいないかを調べるためだった。
  ウォーデンとハドリーが抜き打ち検査に向かったのは、アンディの監房だった。アンディの監房には、仲間が持ってきてくれた岩を彫ってつくったチェスの駒が、小机や壁の縁に所狭しと並べられていた。そして、ベッドの枕元の壁面には、リタ・ヘイワースのポスターが貼ってあった。
  しかし、禁制品や危険物はないということで、検査はパスした。女優のポスターも大目に見てもらえた。
  つまり、検査は所長たちによるアンディの「値踏み」だった。有能な銀行家としての知識や技術の片鱗を見せたアンディを、今後、ウォーデンやハドリーをはじめとする幹部たちが便利に利用し、「私腹を肥やす」ために利用していくいための「瀬踏み」をしたのだ。

図書係の仕事

その後、アンディは職場の配置転換を受けた。洗濯係から図書係になった。インテリの彼には相応しい仕事場だったが、しかし図書室にはほとんど本がなかった。受刑者に文化や知識・教養を得る機会を与えるということは、当時の刑務所の運営方針には一片たりとも含まれていなかった。
  メイン州政府はいかなる刑務所にも、図書費予算を認めていなかった。ウォーデン所長にしても、それはごく当然の状態だった。
  要するに、彼らは、アンディを管理・利用しやすい環境に置きたかったわけで、本当に知識人に相応しい職場を与えようとは思ってもいなかったのだ。
  ところが、アンディは、受刑者のために文化や知識・教養にアクセスする場を何とかつくり出そうと考えていた。そこで、所長に申し出た。「毎週、州議会元老院に図書購入予算を認めてくれるよう誓願する手紙を書きたい」と。所長は許可した。
  とはいえ、アンディの実際の仕事は、刑務所のスタッフたちの資産管理や資産運用、節税対策を考案し、実行することだった。毎日のように、刑務官たちがアンディのもとに訪れた。資産管理や節税対策(税務申告書の作成)を頼むためだった。

  彼の「仕事」はきわめて的確で、刑務官たちは大いに懐を潤わすことができた。
  噂を聞きつけて、州内の別の刑務所のスタッフたちがショーシャンク詣でを始めるようになった。彼らの依頼を組織的・効率的にまかなうために、各地の刑務所のスタッフのあいだの親善野球大会を開催し、試合の合間にスタッフたちが図書室のアンディのもとに詰めかけた。
  図書室には、長らく以前から係を務める老受刑者、ブルックス・ハトルンがいた。すでに刑務所で50年近くの年月を過ごしていた。そして、近々、仮釈放が認められ、出所する予定だった。
  彼は、職場の仲間が増えて喜んだ。そして、資産管理や節税対策の実務では、書類の仕分けや保管などでアンディの助手になった。
  そして、ついにウォーデンがアンディに仕事を依頼するようになった。それは節税というよりも、刑務所の予算の横流し(横領)と蓄財、そして脱税、闇の資金の洗浄(マニーローンダリング)だった。
  アンディは、架空の人物名と身分証などを拵えて、州内各地の銀行に口座を開設して、後暗い資金の蓄積や移動の複雑な仕組みをつくり上げ、税務当局の監視を完全に逃れる経路を築き上げた。

信頼と友情の絆

さて、この間に、アンディとレッドの関係には大きな進展があった。
  医務室から復帰したアンディは、監房の壁に貼ってある女優のポスターが新しいものに変えられているのに気づいた。マリリン・モンロウだった。あの有名なニューヨークの街路上のシーンだ。地下鉄の通風孔からの風でめくれ上がったスカートを押さえ込んでいるマリリン。太腿までが露わになっている。
  気の利いた快気祝いに、アンディは喜んだ。レッドにお礼の贈り物をしようと決心した。そこで、アンディはエリス・レッドの好きなものを探ろうとした。2人でいろいろ話すうちに、レッドが若い頃、ハーモニカの演奏を趣味にしていたことを知った。
  それからしばらくして、レッドはアンディから贈り物を受け取った。ポスターの礼だという。包みを開けてみると、小さな、しかし上質な作りのハーモニカが出てきた。レッドは、涙が出そうになって顔を顰めた。そしてハーモニカを大事そうに、そっとポケットにしまった。

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