アマデウス 目次
原題と原作について
見どころ
あらすじと状況設定
アントーニオ・サリエーリ
発  端
輝かしいキャリア
2人を隔てるもの
〈神の寵児〉と父親
天才児と英才教育
立ちはだかる父親
音楽旅行
父親コンプレクスと反発
ザルツブルクでの鬱屈
挫折の味
身分秩序の壁
権力と芸術
権力の飾り物
世俗権力の成長と音楽
音楽は特注品で使い捨て
芸術性の芽生え
楽器の開発・技術革新
ひょんな出会い
楽曲の美しさとの落差
ヨーゼフ2世の宮廷で
ドイツ語歌劇
アマデウスの結婚
募る嫉妬と反感
父親コンプレックス
父親の顔つきと表情
サリエーリの計略
フィガロの結婚
妨害工作
天才は時代を先取り
父の死の打撃
アマデウスに死を
天才の早逝
そのほか諸々もろもろ
妻、コンスタンツェのこと
ザルツブルク大司教との対立
バロックからモーツァルトを経てベートーフェンへ

アマデウスの結婚

  ところが、実際にはこのとき、モーツァルトにはコンスタンツェという恋人=婚約者がいた。彼が住居を借りている家主、ヴェーバー夫人の次女だ。
  この歌劇の内容から見て、アマデウスは婚約者に夢中で、ほかの女性に目を向ける余地はなかったようだ。この歌劇のプリマドンナの名はコンスタンツェ。まさに、婚約者に捧げたオペラだ。

  歌劇の物語は、ベルモンテという貴公子が、海賊に攫われてトゥルコのスルタンの後宮に売られた婚約者コンスタンツェを捜し求め、彼女を後宮から連れ戻そうと奮闘する冒険譚。
  貴公子のコンスタンツェに対する愛の深さと、愛ゆえの命がけの冒険(勇気)を讃えた物語だ。

  というわけで、オペラのプリマドンナ役との浮ついた恋はフィクションなのだ。
  モーツァルトは、やがてコンスタンツァと結婚した。自分の家庭を持つことは、アマデウスの念願だった。それはまた、父親からの独立を意図したものだった。
  しかし、金持ちの(そしてあちこちにコネが効く)「良家の娘」との結婚を考えていた父親、レーオポルトは、親の了解も得ずに結婚したアマデウスの勝手な振る舞いに憤慨したらしい。

募る嫉妬と反感

  モーツァルトに嫉妬するサリエーリは、宮廷楽団担当の顧問官オルシーニ=ローゼンブルク伯らと結託して、モーツァルトの足を引っ張ろうとする。
  まず、ヨーゼフの娘の音楽家庭教師への登用を妨害する。宮廷楽団による審査を持ち込んで。いきさつはこうなっている。

  ところでその頃、ヴィーンの音楽家たちは、貴族の子弟・子女の音楽家庭教師を勤めることでかなりの収入を得ていた。
  ところが、モーツァルトは、音楽教師はほとんどやらずに、企画事業としての演奏会(そこで作曲した作品を発表する)で収入を得ようとしていた。そして毎日、作曲にいそしんでいた。しかし、それでは安定した収入は得られなかった。
  しかも映画の物語では、アマデウスは浪費家だったことにされているから、生活費にも事欠く有様だった。
  妻のコンスタンツェは困り果てて、サリエーリに相談(援助を求めに)行った。アマデウスが作曲中の楽譜を(夫に内緒で)持ち出して、ヨーゼフが募集している王室の音楽教師を選任するための審査に応募したいので、力添えしてほしい、と。
  コンスタンツェが持ち込んだ楽譜を見て、サリエーリは愕然とした。
  美しく、繊細でかつ典雅な作品で、まさに神が祝福した天才の創作物だったからだ。これほどの曲をつくることは、自分には到底できない。けれども、楽譜を見ただけで、旋律や曲想を理解できるような能力と鑑賞眼だけは、不幸なことに神によって与えられている。
  何という悲しい運命か、とサリエーリは神を呪った。
  こうして妬ましさゆえに、サリエーリはモーツァルトの宮廷音楽教師への登用の道をふさいでしまったということだ。

  ところが実際には、家庭で金を使いまくったのはむしろコンスタンツェの方で、長期滞在の温泉旅行を繰り返したという。旅行には、専用の衣装や備品をあつらえたりで、旅費以外にもかなり金がかかったという。
  でも、モーツァルトは愛する妻のために、作曲で稼ぎまくろうといそいそと頑張ったらしい。

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