3つの物語「ユニバーサルソルジャー」「ソルジャー」「サイバーソルジャー」
これまたアメリカ軍が開発したアンドロイドの物語だ。
アメリカ軍は20億ドルの費用を投じて、アンドロイド型兵器を開発した。高度な自立的学習能力そ備えたAI――人工知能型コンピュータ――によって、自発的な倫理観や好みさえも制御する思考経路を獲得した。
その結果、このアンドロイド兵士は、自立的学習の結果として獲得した「自分の好み」によって、プロバスケット選手のマイケル・ジョーダンが「クールだ」として、自分の身体を黒人の風貌(皮膚の色、顔面、体型)で覆うことになった。
そのアンドロイドはソロと名づけられ、正規の兵員として配備できるように、兵器の操作や戦闘技術だけでなく、国際法上の規約や交戦規定――たとえば、戦場での非戦闘員の識別と保護など――もメモリーに組み込まれた。
こうした規範データの集積と相互参照、アナロジーあるいはフィードバックによって、ソロは大雑把だが、かなり高い倫理と「人間性」を備えた価値基準や善悪の判断の能力を獲得した。
ところで、ソロの戦闘能力(俊敏さや筋力)は人間の何十倍にも達した。
で、いよいよ実戦への投入ということになった。
ソロは、あるとき大型の海洋調査船に偽装した軍艦に乗せられて、カリブ海を縦断することになった。ユカタン半島の山間部のジャングルで、ゲリラ(麻薬マフィアも兼ねる)の掃討作戦に投入されることになったのだ。この実戦演習でソロの性能試験をおこなうことになっていた。
ゲリラはジャングルの高台に飛行場を備えた基地をつくり、その周囲にコカの栽培地と精製加工施設を配置し、近隣の農村住民たちを農作業やコカイン製造を強要していた。
今回の作戦は、高台の突端の崖を崩落させて、この飛行場と基地を破壊すること目的としていた。
真夜中、ソロは特殊部隊とともにヘリで山岳部の草原に向かった。そこから闇に紛れて、高台の崖に取り付き高性能の爆薬を仕かけることが、ソロの任務だった。
ソロは崖を縦横に移動しながら爆薬を設置していった。
ところが、飛行場に隣接するコカイン精製工場では、近くの村のインディオたちが強制的に働かされていた。ソロの行動規範では、非戦闘員は戦場での保護が必要な対象だった。そこで、ソロはすでに仕かけた爆薬を解除していった。
作戦の指揮官は、ただちに爆破するよう命じたが、ソロは爆薬の解除を続けた。
とかくするうちに、インディオ農民から離れた場所に設置された爆薬が炸裂し、ゲリラに特殊部隊の接近が発覚してしまった。銃撃戦が始まり、飛行場の一部が破壊されたが、作戦は失敗し、特殊部隊は撤退を開始した。
ソロと隊員たちは何とかゲリラの追撃をかわしながら逃走して、ヘリに乗り込み洋上に退避することができた。