サイバーソルジャー 目次
サイバー兵士の心
原題について
見どころ
サイバーソルジャーとは何か
ユニヴァーサルソルジャー
ヴェトナム戦争
1990年代後半 アメリカ
サイボーグ部隊
秘密の綻び
ユニソルの暴走
故郷の家での戦い
ソルジャー
人格なき人間兵器
兵士のスクラップ&ビルド
アルカディア234の住人
意思疎通能力の欠如
トッドの孤独
新型ソルジャー部隊の侵略
サイバーソルジャー ソロ
ユカタン半島のジャングルで
ソロの逃亡
インディオの村で
ゲリラ部隊との闘い
軍とゲリラとの結託
サイバーソルジャー2号
森に消えたソロ
サイバーソルジャーの「心」
おススメのサイト
異端の挑戦
炎のランナー
医療サスペンス
コーマ
評  決

ソルジャー

  2つ目の作品は「ソルジャー」。
  1996年、合衆国のある大病院の新生児室から、生まれたばかりの健康そうな男児が選ばれて軍の研究=訓練施設に送られた。その幼児はトッドと名づけられた。その頃、アメリカ中の病院で同じようなできごとが起きていた。
  こうして軍の施設に集められた幼児たちは、社会から完全に隔離されて、ひたすら「戦闘マシン」となるように育成され、訓練されることになった。

人格なき人間兵器

  この育成訓練プログラムでは、精神的・心理的な側面において、普通の個人としてのパースナリティや自立的な個性や社会性を育む環境条件を完全に奪われていた。そのため、情緒や感情、好奇心、興奮や社会性のある意識や思考、判断をめぐっては、兵器の捜査や戦闘(戦闘のためのコミュニケイションを含む)以外については、脳の発達が封じ込められることになった。
  彼らは、ただもっぱら闘争し相手の戦闘能力を奪い、激しい競争のなかで生き残る、そういう能力の形成に、追い込まれていた。家族の愛情やコミュニティとの触れ合い、役割分担、コミュニケイションなどは、彼らの生活から完全に排除されていた。
  〈命令への服従〉がただ1つの規範だった。その命令には、善悪や好悪の感情・判断抜きに従うことを、厳しい規律によって叩き込まれた。違反者や脱落者には、厳しい懲罰や死が待っていた。


  彼らは、幼児の頃から厳格で過酷な軍事教練を受けていた。兵士として頭抜けて高い戦闘能力や身体能力、サヴァイヴァル能力を身につけるためで、俊敏性や持久力、強い戦闘意欲、闘争で相手に対する優位を確保する技能や状況判断、苦痛に耐える能力を育てられていった。
  あらゆる兵器の操作技術、あらゆる機械の操縦技能、格闘技(マーシャルアーツ)の訓練。荒野を何十キロも走り続ける訓練。重い装備を背負っての行軍演習。脱落者には死が待っていた。
  知能訓練ももっぱら、すばやい状況や戦闘態勢の判断によって、戦闘を優位に進めるための教育だった。
  まさに恐怖と規律(懲罰)が、彼らのメンタリティのオリエンテイションの刺激=教育手段になっていた。

  こうして、通常の社会で生きる人びととは隔絶された、戦闘員=ソルジャーが生み出されていった。彼らには人格や個性は認められず、軍組織のなかで、ただ殺戮と破壊のための道具=兵器そのものとして扱われた。
  射撃訓練では、目的のためには手段を選ばない攻撃が求められた。たとえばテロリストの制圧・鎮圧のためには、彼らが一般市民を人質に取れば、トッドたちは人質もろともテロリストを殺戮撃退するのが当たり前だった。憐憫や躊躇、同情は許されなかった。

  こうした訓練のなかでトッドは幼少時から少年期、青年期をつうじてつねにトップリーダーだった。だれよりも速く、強く、冷静沈着、冷酷だった。というような意味合いでは、人格的個性を包括的に抑圧されたために、むしろ戦闘マシンとしての個性(肉体的・精神的な個体差)はより極端に発現する。
  トッドは17歳ですべての訓練課程を修了して、2013年から世界各地の戦争や紛争のフィールドで戦うことになった。地球上では諸国家、諸地域の政治的・軍事的統合が進み、トッドの戦闘部隊は軍事的衝突が発生するあらゆる場所に派遣された。
  2034年には「6大都市戦争」、翌年には「モスクワ事件」、翌々年にはついに地球外の「アージェンタイン・ムーン戦争」に投入された。この頃には、人類は太陽系をはるかに超え出て外宇宙にその文明と闘争の舞台を拡大したのだ。

  ここで登場する惑星系アージェンタインだが、アージェンタインとは南アメリカの共和国「アルゼンチン」のことで、正式の発音表記は「アルヘンティーナ」だ。その英語読みがアージェンタイン。フランス語読みでアルジャンティヌ。日本では、エスパーニャ語でもなく、英語でも、どこの言葉でもないアルゼンチンという表記がまかり通っているので、ここで注意しておきたい。
  日本は「国際化」を国是として叫び掲げながら、いまだに国際的に通用する外国の呼び名すらまともに用意できていない国なのだ。鎖国の頃とあまり変わっていない。
  ところで、エスパーニャ語のアルヘンティーナには植物名の「ヘビイチゴ」という意味がある。だが、16〜17世紀にポトシなどの銀山が開発されエスパーニャ帝国本国に大量の銀を送り出したことから、「銀(産出)の国」という意味でつけられた名称だと思う。
  そうすると、惑星アージェンタインでは銀鉱山が開発されたのだろう。

前のページへ | 次のページへ |

総合サイトマップ

ジャンル
映像表現の方法
異端の挑戦
現代アメリカ社会
現代ヨーロッパ社会
ヨーロッパの歴史
アメリカの歴史
戦争史・軍事史
アジア/アフリカ
現代日本社会
日本の歴史と社会
ラテンアメリカ
地球環境と人類文明
芸術と社会
生物史・生命
人生についての省察
世界経済
SF・近未来世界