3つの物語「ユニバーサルソルジャー」「ソルジャー」「サイバーソルジャー」
特殊部隊とソロが船に帰還すると、今回の作戦の失敗の原因の調査がおこなわれた。原因はソロの命令違反だった。ソロを設計開発したビル・ステュワート博士が、なぜ爆薬の設置と爆破の命令にしたがわなかったか尋ねた。
「インディオの村人が働かされていた。彼らは非戦闘員で、保護されなければならなかったからだ」とソロは応えた。
この実戦演習の司令官、クライド・ヘインズ将軍は、「要するにソロのメモリーが命令への服従を阻害したのだ。ソロのメモリーを消せ」という結論を出した。もちろん、ソロには秘密にしてだ。ヘインズ将軍は、ソロを自分の命令に盲従する戦闘兵器・殺戮マシーンがほしかったのだろう。
ところが、ソロは船内のあらゆる情報通信を傍受する能力を備えていた。彼は、自らの身体とAIシステムの総体を1個のパースナリティ=自己として認識するところまで学習が進んでいた。人工知能は「精神」や「心」を獲得していたのだ。つまり、人格性を持ち始めていたのだ。そこで、メモリー消去は、自己の存在に対する破壊であると判断して、逃亡を決意した。
人格性や心の獲得とは、他社とは異なる自分を意識し、その独自の生存を何より優先させるということだ。「生物」に近い存在となり、自己の独自性を認識するがゆえに、自立のための反抗や批判能力をもつことになる。
ソロはヘリ格納庫からヘリを奪って飛び立った。
白昼堂々のヘリ奪取は、ただちに司令部の知るところとなり、将軍は特殊部隊の指揮官、マッデン大佐にヘリによる追捕を命じた。マッデン大佐は、とにかく戦闘マニアだった。殺戮と破壊が好みで、ソロの知的な行動スタイルが気に障っていた。だから、ソロの追及に嬉々として飛び出した。
ソロは巧妙に逃げ回り、2機のヘリのチェイシングが繰り広げられた。大佐は、ソロを無傷で捕獲することは不可能だと将軍に連絡して、結局手段を問わずソロの逃避を阻止しろという命令を引き出した。つまり、破壊してもかまわないということだ。大佐は執拗な機関砲攻撃を展開。
ソロは急峻な山腹にヘリを激突させて脱出した。もとより人間の目には見えない素早い動きで、激突寸前に減りから森のなかへ逃げ込んだ。
ところが、大佐はソロはヘリとともに山腹に激突爆発炎上したものと判断した。そこで、地上に部下を集結させて、「ソロの破片」を捜索回収することにした。だが、ヘリの落下地点付近には、ソロの痕跡はなかった。いったん船舶に引き上げて、翌日から特殊部隊による本格的な捜索作戦を進めることにした。