サイバーソルジャー 目次
サイバー兵士の心
原題について
見どころ
サイバーソルジャーとは何か
ユニヴァーサルソルジャー
ヴェトナム戦争
1990年代後半 アメリカ
サイボーグ部隊
秘密の綻び
ユニソルの暴走
故郷の家での戦い
ソルジャー
人格なき人間兵器
兵士のスクラップ&ビルド
アルカディア234の住人
意思疎通能力の欠如
トッドの孤独
新型ソルジャー部隊の侵略
サイバーソルジャー ソロ
ユカタン半島のジャングルで
ソロの逃亡
インディオの村で
ゲリラ部隊との闘い
軍とゲリラとの結託
サイバーソルジャー2号
森に消えたソロ
サイバーソルジャーの「心」
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炎のランナー
サイバーパンク
ブレードランナー

サイバーソルジャーの「心」

  以上に私たちは、3つのサイバーソルジャーの物語を追いかけてきた。
  彼らはいずれも、究極の戦闘能力として創出された兵士=兵器だ。
  ところが、「戦争」とは人間社会の物理的暴力が相互に衝突し、相互に相手の攻撃力を破壊する現象であって、きわめて社会的かつ精神的な現象でもある。ゆえにこそ、戦闘を効果的に進めるために、サイバー兵士たちにはその限りで、高度な精神的能力・学習能力を与えられる。
  だが、彼らは身につけた英知で、やがて戦闘・闘争の負の側面を知り、破壊や殺戮が本来はきわめて特殊・異常な人間活動だと気づくことになる。
  あるいは、兵士としての改造過程で抑圧されていた自分の個性とか埋もれた記憶とかを回復する。

  そうなると、自分を「単なる戦闘道具・機械」としてしか扱わない軍事組織や機構に歯向かい、あるいはそこから逃亡する。
  だが、「心」を抑圧し収奪された兵士は、「優秀な兵士」なのだろうか。


  兵士が単なる殺戮や破壊を事とする存在ならば、文化や個性、そして「心」は邪魔者、阻害要因でしかない。
  そして、戦場では確かに酷い破壊や殺戮が展開される。つまり、そこには凄まじい憎悪や敵対心、野蛮な破壊欲望が際限なく展開することになる。

  とはいえ、社会的文脈において生起する「戦争」は、社会的・文明的・文化的な要素が絡みついている。あるいは、戦役や戦闘をつうじて達成されるべき政治的目的がある。もっとも、軍という戦争組織の部品とか歯車でしかないと見なされた前線の兵士には、そういう目的や意味が伝達されないかもしれない。
  あるいは、目的や意味が伝達されても、あまりに悲惨な戦場の様子は、そんな要素を拒絶してしまうかもしれない。

  クラウゼヴィッツによれば、戦争は相手の攻撃力を撃破することが本質である限り、憎悪や敵対心を組織し方向づける制度や手段、イデオロギーが動員されずにはおかないという。つまり、戦場に派遣される兵士を戦いに駆り立てるように「心」「心理」をコントロールするようになる。それは、精神の自由や自立を奪うことでもある。
  普通の心理状態であれば嫌悪し忌避するであろう破壊や殺戮に人びとを駆り立てる国家の軍事政策や戦争、あるいは軍の組織と個人の「心」の緊張関係が問題となる。
  してみれば、サイバーソルジャーの物語が提起する問題は、深刻な内容を含むものなのだろう。

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