刑事フォイル第9話 目次
第9話 丘の家
足の引っ張り合い
フォイルの転職活動
空き家での爆死事件
ウィリアムの恋人
ウィリアムの両親
「丘の家」
「丘の家」の教官たち
偽装の綻び
悪あがきの帰結
追い詰められたSOE
付録 戦況の構造転換
Uボートの通商破壊の実相
 
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空き家での爆死事件

  フォイルとミルナーの倦怠ムードを吹き飛ばす奇怪な事件がヘイスティングズで発生した。
  それはフェナーが殴り倒された夜半だった。
  地区のボランティアの防空監視員が街を見回っていたところ、かつて古書店があった空き店舗のなかで爆発が起きて、監視員は激しい爆風を浴びて軽傷を負った。
  通報を受けて事件の捜査に駆けつけたフォイルたちは、屋内に爆発で無残な状態になった遺体を発見した。頭部が完全に吹き飛んでいた。若い男性の遺体だった。
  出入り口のドアに鍵をかけ、頭に手榴弾を乗せたままピンを抜き爆発させたらしい。自殺と思しき状況証拠だ。
  遺体の衣服の懐中には高価な懐中金時計が残されていた。時計には「WRM おめでとう/1938年5月4日」という文言が刻印されていた。
  しかし、その金時計は怪しげだった。 時計店で鑑定してもらうと、純金製で造りはかなり高級だと評価された。ところが、最近つくられた型の製品であるにもかかわらず、刻印が1938年5月となっていて、製造日よりも刻印の日時が古いという矛盾があった。
  しかも、時計には長年にわたって使い込まれた小さな傷が多く、かなりの摩耗が見られた。これも、製造時期と矛盾する状態だ。


  警察は遺体の身元を解明するために、一般市民に捜査への協力を呼びかけるこの事件の記事を新聞に掲載させた。WRMというイニシャルが刻印された懐中時計を持つ若者の身元に心当たりのある者に情報提供を呼びかけたのだ。
  すると、記事が載ったその日の朝、青年に部屋を貸している初老の女性、ソーンダイク夫人から心当たりの届け出があった。
  フォイルがその女性に会って事情を聴取した。その結果、青年の名前はウィリアム・メッシンジャーだと判明したが、ソーンダイク夫人は、部屋を貸してからまだ半年ほどだが、よそよそしい態度の無口な青年で仕事に関する話はしたことがないので職業は知らないということだった。

  大家の話によると、青年の生家はこの町らしいが、両親に隠して付き合っている女性がいるためにこの部屋を借りたらしい。マリオン・グリーンウッドという若い女性が彼の部屋を2、3度訪れたことがあるという。
  ところが、大家だという女性の態度には何やら不審な点があった。この町に20年以上暮らしているというのだが、前の年に63歳で亡くなった夫の出身校について質問すると返答をそれとなく拒否されたのだ。

  彼女の案内で青年の部屋に入ってみると、身分証も現金が置いてあった。そして、付き合っている若い女性あての遺書が残されていた。遺書には、結婚の申し込みを拒否されたことに悲観して命を絶つと書いてあった。
  身元を特定する身分証も所持金も、自殺の動機を明らかにする遺書も部屋に残されていた。いや、あたかも捜査の方向を誘導するようにこれ見よがしに証拠が揃いすぎている。フォイルもミルナーもそう感じた。

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