刑事フォイル第9話 目次
第9話 丘の家
足の引っ張り合い
フォイルの転職活動
空き家での爆死事件
ウィリアムの恋人
ウィリアムの両親
「丘の家」
「丘の家」の教官たち
偽装の綻び
悪あがきの帰結
追い詰められたSOE
付録 戦況の構造転換
Uボートの通商破壊の実相
 
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丘の家ヒルハウス」の教官たち

  さて、フォイルを迎え入れた中佐はフォイルの質問を受けて、ウィリアムについてこう説明した。優秀な若者で、フランス北部への潜入作戦の工作員に選抜したが、まだ訓練不足の点が見られたので、直前になって別のメンバーに置き換えた。そのため、落胆し精神的に動揺していた、と。
  失恋よりも任務上の力量不足を知っての自殺ではないかと仄めかしたのだ――もちろんフォイルの捜査をミスリードするためだ。
  だが、ウィリアムがどんな任務につくはずだったかについては、機密だからということで一切語らなかった。

  ウィンティンガムはそのあと、教官室にフォイルを案内し教官たちにフォイルを紹介し、守秘義務を守ったうえで捜査への協力を要請した。
  訓練施設の教官のなかには、上海租界警察の捜査官だったジョン・スタッフォード少佐、犯罪小説家のマーク・ニコルスン、フランス語とフランス文化を教えるジャック・デュモン、ポーランドの抵抗組織の指導者のヤン・コモロフスキー、そして以前は売春宿の主で、少女売春の罪科でフォイルに逮捕され服役していたレオ・マクビー(偽名で本名はメイスン)などがいた。
  スタフォード少佐は格闘技や暗殺技法を教え、犯罪小説家はこれまで取材した多くの犯罪の手口を伝授するのが任務だ。売春宿の経営者は、モラルの低い人物を見極めて賄賂や女性で男たちを篭絡する手口を教えているようだ。


  マクビーはフォイルに対する恨みが深く、ライフル銃でフォイルを狙おうとしたくらいだ。
  警察官だったスタッフォードが格闘技や暗殺技法に長けているのは、武装警察隊の将校だったからだ。当時、中国では抗日抵抗運動とともにヨーロッパ列強の植民地主義的な支配への抵抗・独立運動が活発化していて、ブリテン海租界の警察は抵抗運動や暴動を抑圧するために対ゲリラ・対スパイ作戦に従事する武装警官隊(警察軍)が組織されていたのだ。
  アジアを含めた全世界に広大な植民地帝国を要していたブリテンは、ヨーロッパ戦線ではナチス・ドイツと戦い、アジアでは日本軍だけでなく、各地の民衆の独立闘争とも戦っていた。植民地支配はリスクとコストが飛躍的に高まっていた。しかも、大きな代償を払って獲得した植民地の財貨や食糧や原材料を本国に運ぶ商船の多くは、ドイツ海軍のUボートの通商破壊攻撃によって撃沈されていたのだ。
  かつてブリテン海軍が海洋ヘゲモニーを掌握するために創出した通商破壊戦略は、いまやドイツ海軍のものとなっていた。

  このドラマは、さりげない場面で、そういう世界情勢やブリテンの世界覇権の深刻な危機(というよりも末期状態)を描き出しているのだ。

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