翌朝、フォイルは迎えに来たサマンサのクルマでオーブリー神父の教会に帰ることになった。ところが、彼がクルマに乗る直前、スタッフォード少佐は微妙な言い回しの忠告を与えた。
ハンドルの力を車軸に伝えるステアリング機構に炭化ケイ素化合物(カーボランダム)の粉末をかけて、自動車を操作不能にしてしまう技術も、ここで開発したというのだ。これは「謎かけ」だった。
案の定、帰り道でサマンサが運転するクルマはステアリング機構がマヒして、クルマは道端の納屋に衝突してしまった。さいわい、フォイルに怪我はなく、サマンサも額に軽傷を負っただけで済んだ。
自動車のステアリング機構の破壊工作は、マクビーに脅され唆されたウィンティンガムがやらせたものだった。
マクビーは売春業者の嗅覚で、ウィリアム・メッシンジャーが同性愛者であることを知っていた。だから、女性の恋人に振られて自殺するはずがないという証拠をつかんでいるわけだ。そこで、マクビーはその事実を警察に通報されたくなければファイルを暗殺しろと脅迫・教唆したのだ。
エリート意識剥き出しのウィンティンガムが、見下していた下層階級出身の卑劣漢によって牛耳を取られ、警察官の暗殺に手を貸すことになったのだ。
ともあれ、フォイルたちが教会に帰り着くと、ミルナーがやって来ていた。彼は、マリオンを追尾したらレベナムに着いたというのだ。
マリオン・グリーンウッドがヘイスティングズ警察の追及から逃れるために丘の家に逃げてきたことは、帰り道でマリオンが乗った車とすれ違ったので、フォイルたちも状況は把握していた。
またフォイルは、サマンサから断線した電話ボックスを利用したスパイ活動の証拠(地図)も手に入れた。
さらに、オーブリー神父の許可を得て、テッドが埋葬されているはずの墓を掘り返し、遺体が盗み出されたことが判明した。テッドの遺体はヘイスティングズの空き店舗まで運ばれて、偽装の爆死に使われたのだ。