この映画の出だしは、カルヴィの邸宅での会合の場面です。
顔をそろえたのは5人。
マルチンクス、カルヴィ、右翼のフィクサーであるリチーオ・ジェッリ、その副官のウンベルト・オルトラーニ、そしてシチリア・マフィアととかくの噂のあるミケーレ・シンドーナです。
5人のうち4人までが、ヴァティカン政庁のマルチンクスを中心に組織された銀行家(金融家)集団なのです。「神の銀行家たち」というわけです。
そこで話し合われていたのは、民衆を強権的に抑圧するペルーの軍事独裁政権を支援するためにイタリア海軍の軍艦を売りつける商談、ニカラグァのサンディニスタ左翼政権の打倒をめざす右翼ゲリラへの資金援助の手立て、それに悪名高いチリのピノチェト大統領(将軍)への融資話などです。
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この場面から、マルチンクスが保守的な教皇(とその取り巻き)と結託しながら、合州国レイガン政権とのそれとない提携を背景にして、世界中の右翼と頑迷保守勢力のためのフィクサーとして動いている実情が見えてきます。
CIAの謀略活動家も顔負けするように。
一説では、マルチンクスはCIAの同盟者だったされています。
ヴァティカン銀行の総裁は、ラテンアメリカ諸国で貧困や抑圧に苦しむ民衆を支援しようと活動しているカトリックの修道士たちの切実な要望をほとんど無視して、右翼独裁政権(民衆の困窮の原因となっている)に肩入れしているのです。
マルチンクスたちは、民衆になかで彼らを支援する司祭たちを「赤い神父」と呼んで毛嫌いしていたようです。
ところが、ただひとりシンドーナは落ち込んでいました。
彼は違法な国際送金や賄賂・買収などの容疑でアメリカ当局から訴追され、経営する銀行はすっかり信用を失い破産寸前でした。
この経営危機を脱出するため、「盟友」(のはずだった)IOR総裁マルチンクスに資金援助を求めましたが、冷たく断られたのです。
以前は、シンドーナの金融グループが、マルチンクス(ヴァティカン銀行)が絡んだ怪しげな国際的な資金移動の担い手でした。
しかし、粗雑で手荒いシンドーナの手法は、マフィアとのつながりを疑われるとともに、銀行・企業グループの放漫経営につながり、いたるところで綻びをきたしていました。