カルヴィの金融グループの企業グループは、イタリアのアンブロジアーノ銀行の本店・各支店を入り口として、ヨーロッパおよびラテンアメリカのオフショア市場にたくさんの「抜け穴」、闇の取引きルート、送金経路を張りめぐらせていました。
当然のことながら、イタリア・マフィア諸組織の資金移転や資金洗浄、資産運用の回路としても大いに利用されていたと見られます。
ところが、カルヴィの金融帝国の破綻で、彼らはかなりの資金・資産を失ってしまったようです。このことから、その報復としてカルヴィを殺したのだという容疑も浮かびました。
じっさい2005年には、マフィアの幹部ジュゼッペ・カーロとその一味がカルヴィ殺害容疑で訴追され、法廷で有罪宣告を受けました。
しかし、それは一連の犯罪の末端の実行犯の処罰でしかなく、「ガス抜き」にすぎない。トカゲの尻尾切りで、事件の本当の黒幕たちは野放しになっている、という世評の批判を受けました。
この事件は、アメリカ映画《ゴッドファーザー V》でもその主要なトピックにして重要な背景・場面として描かれています。
制作監督フランシス・コッポラの権力への批判精神とイタリア(シチリア)へのオマージュが込められた作品です。
この映画では、イタリアとアメリカの守旧派マフィアと、マイケル・コルレオーネの指揮下で国際的金融コンツェルンに成り上がろうとする近代派(開明派)マフィアとのあいだの抗争が主題です。
P2や教皇庁の保守派、イタリア政財界の右派、腹黒い銀行家が結託して、コルレオーネ財団の資金を掠め取り、それを教皇庁保守派の政治資金や政界工作資金にしようとする陰謀を企む、というプロットになっています。
2つの陣営がヴァティカンとイタリア政財界への工作をつうじて、権益や勢力を争うのです。
ヴァティカン銀行総裁を後押ししていた教皇が死去し、その後選ばれた改革派の教皇はわずか「1週間?」で急死しますが、それは、教皇庁の保守派と反コルレオーネの同盟が企んだ毒殺=陰謀ということになっています。
この事件の描き方、映像が示した事件の構図は「当たらずとも遠からず」というところでしょうか。
聖職者たちの組織が、血みどろの権力闘争と謀略の巣窟になっていたのですから、「なんでもあり」の状況だったのです。