ペリカン文書 目次
大統領府の謀略
原題と原作について
見どころ
あらすじ
発   端
法科大学院で
「概要書」の独り歩き
大統領補佐官の暴走
  殺し屋カーメル
  「内通者」ガルシア
忍び寄る魔の手
  ヴァヒークの殺害
グランサムとダービー
追い詰められる大統領
ダービーとグランサムの闘い
カーティス・モーガンの死
ダイイングメッセイジ
反撃、そして取引
大統領失脚
作品が描く人物と社会
  ダービーの能力
合衆国の司法制度の1断面
  陪審制とサーキットコート
  複合的で多様な裁判制度
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炎のランナー
医療サスペンス
コーマ
評  決

発   端

  冒頭では、ヘリコプターから撮影された、ルイジアナ州の海辺の湿地帯(マングロウブ林や干潟、そこを棲家にする無数の野鳥の群が描かれる。
  続いて、ワシントンでの宗教的保守派のデモンストレイション。彼らは、最高裁のリベラル判事を槍玉に挙げている。
  それを、連邦最高裁のビルの高層のフロアから眺めているのは、車椅子に乗った判事、ローゼンバーグだ。傍らには、首都の有力新聞、ワシントン・ヘラルドの敏腕記者のグレイ・グランサムが立っている。グランサムは、いましがた、ローゼンバーグのインタヴュウ取材を終えたところだった。
  かなり高齢のローゼンバーグは、病身で1人で起立や歩行ができないほどに衰弱している。余命の限界が2年以内に迫っていた。
  ところが、余命いくばくもないローゼンバーグが、金で暗殺を請け負う殺し屋に殺害されてしまった。自宅のベッドに横たわっているところを襲われ、こめかみを撃ち抜かれたのだ。

  ほぼ同じ頃、ローゼンバーグとは事ごとに対立する保守派の最高裁判事、ジェンセンが同性愛ポルノ映画専門館で映画鑑賞中に薬殺された。表向きには同性愛には強硬に反対しているジェンセンだったが、この手の映画が何よりも好みだった。


  アメリカの最高裁判事は、民主主義を標榜する国家としては奇妙なことに、長老名誉職のようなものだから、終身のポストともいわれている。それゆえ、最高裁の人事再編とそれゆえまた保守派とリベラルとの勢力関係の組み換えは、判事たちの引退や死去がきっかけとなる。
  ほぼ同じ時期に2人もの判事が死亡したということは、最高裁の政治的色相を自分の政治的信条に沿って変えようともくろむ大統領にとっては、絶好のチャンスとなった。だが、大統領は任期終了間近で、目前に再選をめざす大統領選挙が控えていた。だから、ことさら世論を分断するような最高裁判事推薦名簿をこの時期に提出するつもりはなかった。
  おそらく、この大統領は共和党で、政策は保守的で、環境保護よりも企業利益を優先する立場であろうと思われる。阿呆のブッシュのような。

  次期大統領選挙をめぐって、世論調査では現職再選支持派が多数で、再選の可能性は高かった。それゆえ、再選後に、自分の好みの最高裁人事政策を推し進めればいいと考えていた。
  とはいえ、支持基盤である保守派の支持を固めるため、また企業経営者たちからの資金を当て込むために、補充判事の推薦名簿に保守派の法律家をリストアップしていることを、マスコミに匂わせる必要はあった。

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