ペリカン文書 目次
大統領府の謀略
原題と原作について
見どころ
あらすじ
発   端
法科大学院で
「概要書」の独り歩き
大統領補佐官の暴走
  殺し屋カーメル
  「内通者」ガルシア
忍び寄る魔の手
  ヴァヒークの殺害
グランサムとダービー
追い詰められる大統領
ダービーとグランサムの闘い
カーティス・モーガンの死
ダイイングメッセイジ
反撃、そして取引
大統領失脚
作品が描く人物と社会
  ダービーの能力
合衆国の司法制度の1断面
  陪審制とサーキットコート
  複合的で多様な裁判制度
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コーマ
評  決

大統領補佐官の暴走

  フレッチャー・コールは、次の大統領選挙で現職大統領の再選を先頭に立って取り仕切る立場だった。組織の利害や立場は、個人の良心や常識を振り払い、押し潰しても、暴走する。つまり、組織の権力の保持という課題は、自己目的化し、そのメンバーの意思や意識を縛りつけるようになる。
  コールは、大統領から全幅の信頼をおかれている。というよりも、個人としてはさしたる能力や人間的魅力があるわけでもない1人の政治家ポリティシャンを、国内社会全体に「大統領にふさわしいすぐれた人物」として仕立て上げ演出するのは、まさに大統領府のスタッフの最大の任務である。
  「再選に向けて手を打て」と言われれば、高い報酬を払ってくれる――そして、いく分かは自尊心をくすぐるほどの権力の分け前にあずからせてくれる――クライアント=大統領のために、冷酷に徹して策を打ち出すのが使命だと割り切っている。
  そのコールも、「ペリカン概要書」を読んだ。陣営の政治資金の実態を知り尽くし、また大統領の人脈や付き合いの中身を知り尽くしているだけに、疑惑は根拠のあるものだと判断した。そこで、大統領には知らせないで、自分が動かしてきた組織の「闇の部分」を今回は動員することにした。

殺し屋カーメル

  闇のルートをつうじて、中東出身のテロリスト、カーメルに、文書を書いたダービーを抹殺せよ、という注文が出された。仲介者はスネラーという暗号名をもつ男だった。この組み合わせは、2人の最高裁判事の殺害でも「活躍」した。
  そして、カーメルへの情報提供や支援組織もまた動き出した。
  一方、FBIは、2人の判事の殺害の直後、飛行機でアメリカからフランスに向けて出国した人びとのなかに、裏世界ではよく知られた暗殺者カーメルが含まれていることをつかんでいた。それゆえ、判事の暗殺容疑者はカーメルであろうという状況判断をしていた。

「内通者」ガルシア

  その頃、ワシントン・ヘラルド紙の記者、グレイ・グランサムに奇妙な電話が来た。受話器の向こうで、怯えと戸惑いを見せる男の声は、「今回の判事殺害事件の首謀者を知っている。見てはいけない書類を偶然見てしまったから、事件の真相を覗いてしまったんだ…」と告げた。グランサムが質問しようとすると、電話は切れたしまった。ただ、「ガルシアだ」と名乗った。
  「真犯人を知っている」という電話は、もう何百件も寄せられている。だが、彼の直感は、今度の電話は「本物だ」と告げている。事件にかかわった組織の内部にいる人間に違いない。通話記録システムを利用して、相手側の電話の番号を確認した。ワシントン.D.C.のなかの公衆電話だった。

  インフォマント(内部通報者)だ。そして、1回目の通話に使われた公衆電話ボックスの近くで、望遠カメラを手に、張り込みをしながら、再度のアクセスを待つことにした。
  やはりあった。
  電話の主は、知的で端正な顔をした30代後半の男だった。だが、肝心な情報を告げずに、逃げるように電話ボックスから出ていった。男の怯え様から見て、よほどに大きな組織、大きな権力が絡んでいるのではないだろうか。
  グランサムはあとをつけた。男はタクシーを拾って戻っていった。グランサムはタクシーを拾い損ねて、尾行は失敗した。
  とはいえ、通りの場所とか男の姿格好から見て、大きな法律事務所に務める弁護士だと見当がついた。

  しばらくして、また電話があった。今度は、グランサムの自宅にだった。男は何かを言い始めたが、やがて声が止まった。そして、「いや、だめなんだ。私には妻と子どもという家族がいる。彼らの命も危険にさらされる…」という押し殺した声とともに、電話は切れた。
  グランサムが「法律事務所でこき使われているんだろう」と探りを入れたことから、犯罪者たちにも、自分の身元が簡単に割れてしまうと恐れたためかもしれない。それ以来、インフォマントからの電話はなかった。

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