翌日、ダービーはグランサムとともに車で銀行に向かった。市街の公共駐車場に車を置いて、銀行を訪れた。ダービーはモーガンの妻の名を使って銀行の係りに貸金庫と鍵と暗証番号を照合させてから、地下の金庫室に降りた。グランサムは銀行の外で待つことにした。
さて、2人の行動をすっかり把握している殺し屋ティームのうち、男1人は車で駐車場に入り込み、2人の車を探した。そして、車を見つけて、イグニション装置に爆薬を仕かけた。残りの男女1人ずつが組になって、ダービーを追って銀行に入り、ロビーで様子を窺っていた。
ダービーは、貸金庫のボックスからヴィディオテイプのカセットを受け取って銀行を出て、グランサムとともに駐車場に戻った。
グランサムがイグニションキイを回すとセルが空回りして異様な音がした。ダービーは、キャラハンの車の爆発を思い出した。車に爆薬が仕かけられていると知った2人は車から逃げ出した。
爆殺失敗に気づいた男女ペアの殺し屋は銃を抜いて2人を追いかけた。爆弾担当の男は、駐車場を逃げ回るダービーたちを追いかけたが、かわされて別の車に衝突して火災事故を起こした。逃げる間もなく燃料が爆発して焼け死んだ。ダービーとグランサムは、残りの殺し屋をどうにか振り切った。
さて、ワシントン・ヘラルドではキーン編集長らが気を揉んでいた。グランサムが借りていた車が置かれた駐車場で爆発事故があったからだ。
そこに、ヴィディオテイプを手にしたダービーを連れてグランサムが戻ってきた。ダービーの紹介と事情の説明を手短に済ませてから、編集長と新聞社の幹部を集めて、この事件の検討会をおこなった。
会議室では、ダービーとグランサムにブリーフィングをさせてから、モーガンのヴィディオ映像を見た。
映像に残されていたのは、モーガンの死を覚悟しての妻に宛てたメッセイジだった。
「君がこれを見るとき、ぼくはもう死んでいるはずだ。
ぼくは、上司が置き忘れた文書を読んでしまった。読んではならないものを。そこには、2人の最高裁判事の暗殺依頼を計画し仲介したことを証する内容が書かれていた。いずれ上司はこのことを知り、ぼくを抹殺しにかかるだろう。
こんなことになってしまって、すまない。でも、これからも、ぼくの心は君といしっょだ…」
ダービーが書いた「ペリカン概要書」とこれまでに経緯、そして、モーガンのダイイングメッセイジで、記事を発表するための裏づけは揃った。ということで、編集部は、記事を仕上げてから、翌日の新聞の第1面トップに《2人の判事暗殺事件の真相と「ペリカン概要書」》というテーマで特集記事を掲載することを決めた。
だが、大企業と大統領府(補佐官)、闇の犯罪組織が絡み合っている事件だ。今後のダービーの身の安全を図るために、グランサムと編集長は「一芝居」打つことにした。