ニュウヨーク在住のイングランド人ミュージシャン、スティングの作品に ENGLISHMAN IN NEW YORK があります。
彼は、民族や人種による差別について批判的な見方をしています。ニュウヨークに住むのも、そこがコスモポリス――世界都市――だからのようです。世界のいろいろな地域からやって来た異邦人、移民たちからなる街で、彼らがみな市民として対等に向き合うことができる街としての側面があるからだということです。
だから、スティングは移民排斥をセンセイショナルに主張するトゥランプ政権に対して――音楽活動をつうじて――辛辣な批判をおこなっていました。
ENGLISHMAN IN NEW YORK という作品はメロディも美しいが、そういうスティングの立場・思想をスマートに詩 に盛り込んでいてすばらしいですね。
ENGLISHMAN IN NEW YORK
I don't drink coffee I take tea my dear
I like my toast done on one side
And you can hear it imy accent whe I talk
I'm an Englishman in New York
See me walking down Fofth Avenue
A walking cane at my side
I take it everywhere I walk
I'm an Englishman in New York
I'm an alien I'm a legal alien
I'm an Englishman in New York …反復略
If, "manners make the man" as someone said (make the man は maketh man とも表記される)
The he's the hero of hte day
It takes a man to suffer ignorance and smile
Be yourself no matter what they say
I'm an Englishman in New York
I'm an alien I'm a legal alien
I'm an Englishman in New York
…以下略
私なりに詩を訳してみましょう。
私はコーヒーは飲まない、紅茶を飲むんだ、友よ/トーストは片側だけ焼いたのが好きなんだ/あなたがたは、私が話すときのアクセントからわかるだろう/私はニュウヨークに住んでいるイングランド人さ/私が五番街を歩いているのを見たまえ/どこを歩くにもステッキを傍らに携えているんだ
私はニュウヨークに住んでいるイングランド人さ/私は異邦人だよ/法制度上は私は異邦人なのさ
人びとが言うように(ことわざに言うように)、態度(行動様式)が人をつくるものなら/彼こそ今日(の時代)にあって誇りを失わない人物だね/その代わり、人びとから無視され、嘲笑されるてしまうこともあるのさ/周りの誰が何を言おうと、自分らしくあれ(自分らしさを見失うな)ということさ
私はニュウヨークに住んでいるイングランド人さ/私は異邦人だよ/法制度上は私は異邦人なのさ
ここで「エイリアン」という語が鍵になります。「異邦人」という意味だが、外の世界から異国から来た人物で、法制度によって「国籍での差異」を刻印されている、という意味合いが込められています。
legal とは、「法的な」とか「合法的な」「法的に認められた」という形容詞ですが、ここでは、さらに日本語にすると副詞的に「法律的に見れば」「法制度上は」という意味合いにも使われています。
私が思うに、スティングはここで合法的かどうかは問題にしていないはずです。国民国家という政治制度が厳然と存在し、したがってイングランドからニュウヨークに来た人物は、同じ人間、本来、市民権をもつ存在でありながら、法制度上は「外国人」「異邦人」という扱いになってしまうという現代世界の仕組みを――懐疑を込めて――斜に見ているのです。
人種や民族、文化や言語、国籍や出身地などという制度が人びとのあいだに偏見や差別や格差をもたらすことが多い、現代世界を突き放して描いているのです。
ところで、エイリアンという語には、動詞として「つまはじきにする」「異物として差を設ける」「よそよそしくする」「疎外する」という意味があります――正確には alienate 。 alienation は「疎外――ドイツ語の Verfremdung に当たる――」という意味になります。
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