この作品は、第2次世界戦争の末期、ナチズムからのヨーロッパの解放にとって決定的な意味をもつ「ノルマンディ上陸作戦」の「最初の1日」のできごとを描いた映画です。
1944年6月5日午後からほぼまる1日間、この作戦をめぐる連合軍とドイツ軍との攻防、すなわち、それぞれの陣営の状況判断や意思決定、軍備や兵員の配置、ノルマンディ地方の各戦線の動きなどが描かれています。
冒頭では、北フランスがドイツ軍に占領支配されている状況が描かれます。
その後、題名の 「とてつもなく長い1日:The Longest Day」 という語句の由来となったドイツ軍元帥、ロンメルの発した言葉が登場します。
ロンメルは、戦況が悪化していた北アフリカ戦線から転任して、連合軍の北フランスへの上陸侵攻を阻止すべく、この地方のドイツ軍の防御体制の構築を指揮してきました。そして1944年6月5日、ロンメルはドーヴァー海峡に臨む北フランスの陣地を視察したとき、同行した将官たちを前にして言いました。
「海峡の向こうには恐るべき怪物が大陸への侵入をねらっている。上陸が成功すれば、連合軍の優位は確定するだろう。
だが、われわれも万全の防備を固めている。われわれは連合軍将兵の1人たりとも上陸を断固阻止する。
この地をめぐる戦闘では、最初の24時間が決定的に重要で、それが勝敗の帰趨を決定することになろう。
つまり、その24時間はとてつもなく長い1日になるはずだ」と。
1944年6月6日、北フランスへの連合軍の上陸進入作戦が始まります。
よく知られているように、この日は《D-Day》と呼ばれています。
海岸への上陸作戦としてはまさに史上最大規模で、総勢300万の兵員が投入されたということです。
第2次世界戦争の終結に向けた動きのなかで最も重要なできごとだったのです。
ノルマンディ海岸への上陸は、より大きな作戦=戦略の一部分を構成していました。
この、上陸してからさらに北フランス、ネーデルラント、ベルギーの解放をめざす一連の作戦は、「オペレイション・オーヴァーロード(大君侯作戦)」というコードネイムがつけられていました。
ドイツのかつての国境線以西をナチスの軍事的支配から解放し、ドイツ本領への侵攻の足場を固めることが戦略目標だったわけです。
この大作戦が完了するのは8月19日。
連合軍がセーヌ河を越えたときだということです。
しかし、実質的な作戦完了は8月末と見るべきかもしれません。それは、パリ解放が完了し、ドイツ国境まで連合軍が迫り、さらにライン河に向けて進軍する準備が始まったときです。
ところで、第2次世界戦争の最終局面を用意したノルマンディ上陸作戦を理解するためには、全ヨーロッパを1つの主戦場とするこの大戦争の始まりからの歴史=経緯を知っておかなければならないでしょう。