史上最大の作戦 目次
原題と原作
見どころとテーマ
あらすじ
とてつもなく長い1日
オーヴァーロード作戦
ヒトラーの電撃戦と誤算
戦線の拡大とメディア
長期戦への転換
占領・征服政策の欠如
泡のような膨張とリスクの累積
無策・無謀な国家指導者たち
戦線の膨張
枢軸同盟の成立
伸び切った東部戦線
兵站リスクの膨張
東部戦線の崩壊
ソ連軍の反転攻勢
北アフリカおよび地中海戦線
解放侵攻戦略の策定
イタリア降伏
アンツィオの戦い
連合軍のディレンマ
北西ヨーロッパの戦況
ノルマンディへの道
兵站構築(logisitics)
上陸地点は
ノルマンディ海岸
偶発的要素としての天候
ネプチューン作戦
作戦開始
5つの上陸地点
爆撃・砲撃戦
ドイツ軍の混乱
戦闘シーン
偶然が支配する戦況
戦争の形態の構造転換
全体戦争
ヒトラー=ナチス・ドイツの失敗
ヒトラーの無策・無謀
ゆがんだ情報システム
スーパー兵器の袋小路
突出しすぎた性能は戦線の混乱を呼ぶ
スーパー兵器の末路

泡のような膨張とリスクの累積――泥沼への道

  この戦略目標の誤りは、ヒトラーが自らの外交や戦争政策の正統化のために上辺だけ利用した「地政学(Geopolitik)」を、彼自身がまったく理解していなかったことが原因でした。
  彼の戦略の欠如というか無謀さを見るために、ヨーロッパ戦線の推移をごく大雑把に追いかけてみましょう。

■無策・無謀な国家指導者たち■

  1939年から始まったナチス・ドイツの侵略は、またたくまにその地理的範囲を拡大していきました。
  ヒトラー政権はそれまで明白な反ソ連・反社会主義の政策を追及してきました。
  そのため、ブリテンはドイツの膨張主義や軍備拡張を大目に見て、抑え込みをはからなかったのです。ことにチャーチルはソ連嫌い、社会主義嫌いでしたから。
  だが、39年8月に突如、ソ連と不可侵条約を結んだのです。

  1939年9月1日、ドイツ軍はポーランドに侵略を開始。
  これを見て、スターリンもソ連軍をポーランド東部に送り込みました。
  両国はその1月前に不可侵条約を結んだばかりです。
  ところが、ヒトラーもスターリンも、この協定が見せかけで、本格的な戦争にいたるまでの一時的な準備期間を用意するにすぎないものと割り切ってましいた。

  とりわけソ連は、「革命」とその後の長い混乱からようやく回復し始め、経済と軍の再建が軌道に乗り始めたばかりでした。
  強国ドイツとの開戦の準備は、容易に整えられません。したたかなヒトラーは、ソ連の戦争準備が整わないうちにいずれ攻撃を仕かけるつもりでした。

  ドイツ軍は、9月のうちに、ソ連が占領した東部地帯を除くポーランド全域を征服しました。
  ソ連軍も防衛線を国境の向こう側に設定するために、フィンランドに侵略し、ルーマニア(バルカン半島東部)をも支配しました。
  フィンランドへの攻撃はスターリンの戦略的な失敗で、ドイツ軍はソ連に抗戦していたフィンランドを軍事同盟に引き入れ、バルト海北部からのソ連攻撃の拠点にしてしまいました。

■戦線の膨張■

  さて、ポーランドと同盟を結んでいたブリテンはフランスと連合して、9月3日ドイツに宣戦布告します。ドイツは、いくつもの西ヨーロッパ諸国家をも敵に回すことになってしまいました。

  翌1940年5月、ドイツ軍はマジノ線を突破してベルギーを征服、続いてネーデルラントも占領しました。
  この侵略・征服を阻止すべく、ブリテンは海峡の対岸に軍を派遣します。しかし、上陸を阻まれ、多数の死傷者を出しながら、ダンケルクで海に追い落とされるように退却しました。
  そして、6月14日、北フランスが征服されパリが陥落し、フランスは降伏。翌月にはフランス中部の都市、ヴィシーにペタン将軍を首班とする政権が樹立されました。
  だが、ドイツ軍が後ろ盾となった傀儡政府でした。

  ドイツ軍の征服はさらに拡大して、この年の真夏までには西フランス(ボルドー)からピレネーが征圧されました。
  ドイツ軍は大西洋沿岸部をいち早く軍事的に支配する作戦でした。
  こうして、フランスの北半分と西部はドイツ軍の占領と直接支配のもとに置かれ、南部の統治がヴィシーの傀儡政府に委ねられるという形になりました。

  とはいえ、北アフリカ戦線でフランスと連合軍が攻勢に出ると、ドイツ軍は南部と地中海方面にも占領と征服を進めることになりました。  
  一方、この間(40年4月〜6月)に、ドイツ軍はデンマークとノルウェイを占領していきます。

前のページへ | 次のページへ |

総合サイトマップ

ジャンル
映像表現の方法
異端の挑戦
現代アメリカ社会
現代ヨーロッパ社会
ヨーロッパの歴史
アメリカの歴史
戦争史・軍事史
アジア/アフリカ
現代日本社会
日本の歴史と社会
ラテンアメリカ
地球環境と人類文明
芸術と社会
生物史・生命
人生についての省察
世界経済