史上最大の作戦 目次
原題と原作
見どころとテーマ
あらすじ
とてつもなく長い1日
オーヴァーロード作戦
ヒトラーの電撃戦と誤算
戦線の拡大とメディア
長期戦への転換
占領・征服政策の欠如
泡のような膨張とリスクの累積
無策・無謀な国家指導者たち
戦線の膨張
枢軸同盟の成立
伸び切った東部戦線
兵站リスクの膨張
東部戦線の崩壊
ソ連軍の反転攻勢
北アフリカおよび地中海戦線
解放侵攻戦略の策定
イタリア降伏
アンツィオの戦い
連合軍のディレンマ
北西ヨーロッパの戦況
ノルマンディへの道
兵站構築(logisitics)
上陸地点は
ノルマンディ海岸
偶発的要素としての天候
ネプチューン作戦
作戦開始
5つの上陸地点
爆撃・砲撃戦
ドイツ軍の混乱
戦闘シーン
偶然が支配する戦況
戦争の形態の構造転換
全体戦争
ヒトラー=ナチス・ドイツの失敗
ヒトラーの無策・無謀
ゆがんだ情報システム
スーパー兵器の袋小路
突出しすぎた性能は戦線の混乱を呼ぶ
スーパー兵器の末路

東部戦線の崩壊

  さて、地理的に奥深い懐を有するロシアは、防御の戦線を後退させて防衛の拠点と兵站を再構築し、反撃の準備を着実に進めていました。
  ソ連の防御戦線は、1942年の年末から43年の厳冬季まで後退を続けます。そして、この厳寒の季節から反転攻勢への準備を整えていたように見えます。
  厳寒気候に慣れないドイツ軍が、ロシアの広大な平原を維持するのは、難しいことを考えてのことかもしれません。

  ウラルのトラクター工場では、工程ラインを組み換えて、戦車を大量に製造し毎月何千台ものT-34を前線に送り出していきます。
  組み立てラインから送り出された戦車は、ただちに戦闘態勢に移ることができました。途切れることのないほどの戦車団の列が、ハルィコフ、ミンスク、クルスクなどをめざして疾駆していきました。

■ソ連軍の反転攻勢■

  一方、ドイツの戦線はバルト海東端からレニングラード、モスクワ近郊、そして南部はグルジア方面にまで膨張していました。
  いわば伸びきったゴムのような状態になっていて、ドイツ軍の兵員配備や軍備の密度は著しく希薄化し、要衝のいたるところに空隙や空白が生まれていました。補給・兵站線は欠落していました。一見、軍事的に制圧した地帯には、ドイツ軍の支配に抵抗しようとする都市や集落が散在していました。ソ連側の反撃作戦が浸透すれば、ドイツ軍は住民たちのゲリラ戦で消耗することは不可避でした。

  ヒトラーの電撃戦は、相手側の無防備と準備欠如を巧みに衝いてたたみかける攻勢であって、それ以上のものではなかったのです。軍事的支配や優位の継続つまり政治や統治については、まったくの無定見だったいうほかありません。
  しかし、ドイツ軍はこの緒戦の「過剰な成功」に酔いしれていて、征服・占領した地帯の長期的な維持についての綿密な作戦はもち合わせていなかったのです。


  とりわけ冬季の寒気が厳しいウクライナやロシアの平原での兵站と補給は、ほとんど何の手当てもされていまぜん。
  こうして、1943年が始まると、ドイツ軍の東部戦線のあちこちで、ドミノ状態で破綻や崩壊が始まっていきます。

  ソ連軍は43年春からの攻勢で、8月までにクルスク、ミンスク、ハルィコフを奪還。11月にはキエフを攻略します。
  そしてこの年のうちに、ウクライナとベラルーシ、ルーマニアとハンガリアの東部まで侵攻しました。

  解放戦争の機動性は、何よりも膨大な数の戦車団によって確保されました。
  ドイツ軍の要衝・拠点に対する正面突破攻撃を仕かけているあいだに、戦車隊が正面を大きく迂回して敵の背後を衝いて攻囲し、退路を遮断。そのうえで、撃滅ないし殲滅戦を挑んだのです。

  ロシアやウクライナの広大な平原地帯の地理や気候を知悉する者だけが、考えつく戦術です。そこに深く入り込んだ者たちは、恐ろしいしっぺ返しに遭遇します。
  そのため、ドイツ軍は42年冬から師団以上の単位で大量降伏が続き、加速度的に兵力の喪失・損耗を出していきました。

  こうして、1944年春までに東部戦線の崩壊は明らかになりました。
  とはいえ、「ドイツ本土」まではまだ数百kmを残していました。しかも、本土に接近するにつれて、ドイツの軍備の密度は高くなっていきます。

  ところが、ドイツと枢軸国が支配し、それゆえまた軍事的要衝になっていた東ヨーロッパの諸都市では、民衆の抵抗やサボタージュが頻発します。そして農村や森林地帯、山岳部ではパルティザンの闘争が活発化していきます。
  それらによって、とりわけドイツ軍の補給線(鉄道、橋、道路)が破壊され、攪乱されるようになっていきました。

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