史上最大の作戦 目次
原題と原作
見どころとテーマ
あらすじ
とてつもなく長い1日
オーヴァーロード作戦
ヒトラーの電撃戦と誤算
戦線の拡大とメディア
長期戦への転換
占領・征服政策の欠如
泡のような膨張とリスクの累積
無策・無謀な国家指導者たち
戦線の膨張
枢軸同盟の成立
伸び切った東部戦線
兵站リスクの膨張
東部戦線の崩壊
ソ連軍の反転攻勢
北アフリカおよび地中海戦線
解放侵攻戦略の策定
イタリア降伏
アンツィオの戦い
連合軍のディレンマ
北西ヨーロッパの戦況
ノルマンディへの道
兵站構築(logisitics)
上陸地点は
ノルマンディ海岸
偶発的要素としての天候
ネプチューン作戦
作戦開始
5つの上陸地点
爆撃・砲撃戦
ドイツ軍の混乱
戦闘シーン
偶然が支配する戦況
戦争の形態の構造転換
全体戦争
ヒトラー=ナチス・ドイツの失敗
ヒトラーの無策・無謀
ゆがんだ情報システム
スーパー兵器の袋小路
突出しすぎた性能は戦線の混乱を呼ぶ
スーパー兵器の末路

ヒトラーの電撃戦と誤算

  多くの戦史家の研究や史料によれば、ヒトラーに指導されたドイツ軍のヨーロッパへの攻撃と侵略は、「電撃戦(Blitzkrieg)」です。ナチス自身がそう呼んでいました。
  もともとは緒戦での圧倒的優位を確保することで、ブリテンとの講和にもちこむことを戦略目標としていたというわけです。
  つまり、短期決戦をめざしていたのです。稲妻のように素早い進撃と征服をめざしていました。
  大博打に打って出たわけです。

  たしかにドイツ軍はまたたくまにネーデルラント、ベルギー、フランスを占領し、ヨーロッパ大陸での圧倒的な軍事的優位を確保しました。しかし、ブリテン首相チャーチルは、ヒトラーとの講和交渉に見向きもしません。
  ブリテンは、つい先頃まで世界覇権を握り、ヨーロッパ各地と全世界に権益のネットワークを敷設していました。
  ドイツは、この権益のネットワークの大事な部分を破壊してしまったのです。「虎の尾を踏んだ」わけです。講和なんかとんでもない、というわけです。
  このとき、ヒトラーもブリテン政府もともに、とんでもない戦況の読み違いをしていたのです。ことにブリテン政府は、ナチスドイツの軍事力をソヴィエト連邦への対抗力として利用しようという思い上がった甘い考えを続けてきた結果、ほぼ無抵抗でドイツ軍の西ヨーロッパ侵攻を許してしまったようです。

■戦線の拡大とメディア■

  ところが、ドイツ軍が占領支配した地域の諸国民、フランス、ベルギー、ポーランド、チェコスロヴァキアなどは、国外に臨時政府を組織し、ナチスの征服を非難し、ナチスの後ろ盾で成立した「国内政権」の正統性を全面的に否定しました。
  ラディオや映画、無線電信、電話、新聞などマスメディアが発達したヨーロッパにあっては、従来の戦争のように首都や国土を制圧しても、戦争や征服は決着しなくなっていたのです。

  国外に逃れた指導者たちによって、亡命臨時政府がつくりあげられました。それが正統的に国家=国民の主権を代表する政権となり、統治情報の発信源として、国内の住民や国際社会に向かって、ドイツ軍の征服と支配を非難するメッセイジを送り続けるようになったのです。
  こうして、ナチスへの抵抗や反乱を組織化・指導する拠点は、大陸内部はもちろん大陸の外部にも拡散してしまったわけです。

  それまでヒトラーは、占領・征服した領土の政権を奪取し、支配を貫徹させ、民衆の意識を操作あるいは統制するためにマスメディアを利用しつくしてきました。
  ところがマスメディアは、こんどはナチスの占領支配に敵対し、その正統性や優位を掘り崩すための手段として立ち現れてきたのです。
  ヒトラーとナチスは、自らが攻撃手段として用いていてきた手段が、相手の手の内で自分に対する攻撃手段となるときの防備を考えていませんでした。

前のページへ | 次のページへ |

総合サイトマップ

ジャンル
映像表現の方法
異端の挑戦
現代アメリカ社会
現代ヨーロッパ社会
ヨーロッパの歴史
アメリカの歴史
戦争史・軍事史
アジア/アフリカ
現代日本社会
日本の歴史と社会
ラテンアメリカ
地球環境と人類文明
芸術と社会
生物史・生命
人生についての省察
世界経済