映画を観ている側は、すでにプロットがわかっているのですが、ティム・カーリーが生真面目一徹のあの表情でこのセリフを語ると、思わずにっこりしてしまいます。
フリゲイト艦は、光信号でレッドオクトーバーに「停止せよ。さもなくば、攻撃する」と警告しました。
クルーが退避し終わったとたん、原潜は潜航に入りました。
フリゲイト艦は潜水艦の鼻先に(命中しない安全な位置に)砲弾を撃ち込みました。
そして、レッドオクトーバーが海中に消えたのち、救命ボートに乗るクルーたちはフリゲイト艦に救助されました。
さて海中では、ダラスから艦長、ライアン、ジョーンズ、護衛役などがDSRV(深海救難艇)に乗り込んで、レッドオクトーバーをめざします。それは、海中で事故を起こした潜水艦のクルー救出のための小型潜航艇です。
DSRVがこの艦のハッチに密着すると、ハンマーを叩いて合図を送り、内側からハッチを開けさせました。
DSRVは、アメリカ海軍が情報を掌握している世界中のあらゆる潜水艦のハッチ形状に対応して救助活動ができるようになっているということです。
レッドオクトーバーの司令室に到達したライアン一行は、ラミウスと亡命意思と艦の引渡し意思の確認をおこないました。
そして、マンキューソがレッドオクトーバーの指揮権を掌握します。
ところが、この海域からの離脱をしようとしたそのとき、ソナー・スピーカーから、艦のすぐ横をソ連原潜が発射した魚雷がかすめる音響が響き渡りました。
トゥポレフが艦長として指揮する原潜、コノヴァロフです。
トゥポレフはラミウス屈指の教え子ですが、艦隊では、その傲岸不遜な性格から「鼻つまみ者」となっているのです。
この艦長の独断専行ぶりは、6時間遅れで艦隊司令部からの「レッドオクトーバー撃沈命令」を受けたのち、なりふり構わず追跡活動に入るシーンで描かれています。
彼は、なんと艦内で喫煙しているのだ!
酸素の過大な消費と空気汚染という当然の理由から、潜水艦内では完全禁煙である。にもかかわらず、部下の前で平然とタバコをふかすこの態度。
たぶん、トゥポレフの陋列な人格を描くための演出で、現実にはありえないでしょうが。
そして、レッドオクトーバー発見の報を艦隊に送ることなく、一騎打ちで勝負を挑むトゥポレフ。手柄独り占めタイプで自信過剰ということでしょう。
最低限の規律を無視する、軍人としては失格以前の問題外だが、そこはそれフィクション。このくらいのあざとい悪役ぶりでないと、戦闘場面では引き立たないのでしょう。
このイヤな奴を演じるのは、スティーラン・スティルスガード。思慮深く温和なインテリがはまり役だと思っていたら、……芸域が広い名優ですねえ。