レッドオクトーバーを追え 目次
原題と原作について
見どころ
あらすじ
発端
レッドオクトーバー
ジャック・ライアン
原潜ダラス
艦長ラミウス
キャタピラー
ソ連東欧の経済=財政危機
偽の演習作戦命令書
キャタピラー
巨体は技術の遅れが理由
コンピュータ技術の遅れ
消されたシーン!?
ラミウスの挑戦状
謎の原潜の痕跡
ライアンの読み
大統領補佐官の命令
レッドオクトーバーを追え
安保外交上の駆け引き
アメリカの当面の対応
ライアンの賭け
「気が狂ったイワン」
亡命のプロット
キャスティング
レッドオクトーバー追撃
破壊工作(サボタージュ)
危難を利用する
トリック&トラップ
破壊工作(サボタージュ)
海の大芝居
海面下の一騎打ち
トゥポレフ艦長
潜水艦戦
海上と海面下
ペルトとソ連大使
ラミウスとライアン
「冷戦構造」とはなんだったのか
軍産複合体の支配
諸国家の軍事的生存環境
パクスアメリカーナ
軍産複合体の「成功」

◆諸国家の軍事的生存環境◆

  ヨーロッパで始まった近代国民国家の歴史(300年間)のなかで、「冷戦時代」はきわめて特殊な構造をもっています。

  1945年以降、主戦場となった西ヨーロッパの諸国家と日本は疲弊荒廃して、アメリカの最優位のもとで1つの、恒常的に統合された軍事ブロックに組織化されました。
  それまで、それらの諸国家は、独立の軍事単位として、世界での覇権や優位を獲得しようと、移ろいやすい同盟関係を取り結びながら、相互に対抗・競争してきました。

  近代国民国家というものが形成され始めてから数百年間、列強諸国家はそれぞれ自立的な軍事単位として、おのれの利害・優位のために動いてきたのです。
  ところが、冷戦構造のもとでは、アメリカを除いて、どの列強国家も軍事単位としての独立性を維持し、主張することができなくなりました。
  戦後、先進諸国家のなかで、単独の判断と力で大きな戦争を実行できたのは、アメリカだけです。
  冷戦時代とは、アメリカという《ヘゲモニー国家》以外は、世界のなかで(実質的にはもちろん名目上でさえ)軍事的・政治的独立性を失ってしまった時代なのです。

◆パクスアメリカーナ◆

  まさにパクス・アメリカーナ、つまり、アメリカの力によって、アメリカのために維持された平和というわけです。

  もとよりそれは、冷戦という構造が、第2次世界戦争の直後にできあがったからという事情もあります。
  世界戦争では、アメリカ以外の列強諸国家、ヨーロッパと日本という地域が主戦場となり破壊されました。そのため、生産や金融、軍事のインフラストラクチャーが大きく損壊してしまったので、アメリカの力の優越は圧倒的になりました。
  それゆえ、それら諸国家の再建・復興には、アメリカの支援(つまりその影響力=権力の受け入れ)がなければ不可能になったのです。

  とはいうものの、ソ連の脅威が外圧となって、先進工業諸国のアメリカの支配下での西側諸国家の結束をより強めるはたらきをしたのは確かです。
  見かけ上の「2つの超大国」の存在が、戦争の荒廃から立ち直りつつあった諸国の選択肢をいちじるしく狭くし、アメリカへの依存=従属しか経済発展や国際化への現実的な途はないかのような状況を生み出してしまったのです。

しかし、ソ連東欧が自滅してしまった事実を見るとき、世界経済=世界分業の体系においては、アメリカの最優位が貫徹し、ソ連東欧は上辺だけの局地的な抵抗というか反乱でしかなかったという事態の本質が見えてきます。

  植民地状態や従属から政治的独立を目指したアジア、アフリカ、ラテンアメリカの諸国民・諸国家の運動は、冷戦構造のなかで異様なバイアスを受けて歪んでしまいました。

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