サンジャックへの道 目次
原題について
見どころ
予備知識として
聖ヤ―コブ伝説
奇蹟の伝説と巡礼風習
あらすじ
不仲の3人兄妹弟
出発地のルピュイ
道連れの面々
何も持たないクロード
現代フランス人の旅
「やれやれ」な旅立ち
余計な重荷は捨てるしかない
「余計なもの」を捨てる旅
人生は重荷を背負った上り坂
クロード
ラムジ
カミユ
マティルド
ギュイ
人生の出会いと交錯
「原則」とリアリズム
道連れ、そして仲間意識
ラムジの境遇
課題を見つけたクララ
ラムジの学習
「薬漬けの日々」からの脱出
聖職者たち
聖職者も人間・・・
誠実な神父もいる
強欲で罰当たりな司祭
聖地まで歩き続けるぞ!
虚栄で流行を追う者
寄せ集め国家の不協和音
仲間は兄弟、助け合うもの!
聖地巡礼で得たもの
クロードの酒気を抜け
巡礼旅の終わりに
エピローグ

出発地のルピュイ

  ルピュイからの遍路の道のりは、フランス各地からの巡礼路としては短い方です。それでも1500キロメートル以上もあるようです。フランス国内だけでも500キロメートルにおよぶとか。
  サンティアーゴまでの旅程日数は、2か月から3か月。その間、ひたすら徒歩。山岳をいくつも越えていく旅なのです。
  遍路には何十もの「札所」、つまり到達と通過を確認する拠点があって、巡礼参加者カードにスタンプを押してもらうようになっているようです。日本の巡礼遍路とよく似ているのですね。

  さて、ルピュイという都市は、ロワール河の源流地帯、オートロワール県の山岳地帯にあります。オートロワールとは、ロワール高地、すなわちロワール河の源流地帯の高原というほどの意味です。
  ルピュイ( le Puy )というのは、本来は山岳や高地、高原を意味する語で、そういう名を持つこの町は、フランス中央高地の中心都市です。
  地図で見ると、フランス中央部のやや南に位置する場所です。
  夏になれば、ルピュイには中央高地の高原歩きや登山のためにヨーロッパ中から人びとが押し寄せるといいます。

  ここにはノートルダム聖堂と修道院があります。「ノートル・ダム」とは「私たちの貴顕婦人」という意味で、つまり聖女マリアのことです。
  あるいは、この町の守護聖人が聖母マリアなのかもしれません。
  このマリアに因んだ寺院が、ここから始まるサンティアゴ巡礼の遍路のターミナルともなり、さらに遠いところからの遍路の主要な中継地になっています。

道連れの面々

  出発の日、クララは大勢の観光客とともに、ルピュイ駅で電車を降りました。ピエールは、側近のロベールが運転する高級車で駅まで送ってもらったようです。
  駅舎が今回の巡礼旅の始まりで、そこには今回のティームの参加予定者8人が集まることになっていました。

  引率者はギュイという中年男で、サンティアゴ巡礼のほかにも、雇われて登山や遍路旅のインストラクターをしています。
  今回の旅の引率――巡礼なので先達というべきか――の仕事は、ピエールたちの老母の遺言を管理する公証人の依頼で引き受けました。見かけは北アフリカ出身者のような風貌です。アルジェリアからの移民系でしょうか。

  集合場所には、以下のメンバーがやって来ました。
  スタイル抜群の中年美女、マティルド
  :最近、離婚したうえに癌を患って、最近ようやく回復したところ。
  アラブ系移民の若者2人、サイード(高校生)と親友のラムジ
  :巡礼トゥアーの参加料金は、サイードがラムジをそそのかして、ラムジの母からメッカに巡礼に行くと言ってくすねたようです。
  ラムジは失読症(あるいは難読症)でフランス語が読み書きできません。ラムジはサイードに騙されて、メッカに巡礼すれば願いがかなって識字能力が身につくと信じているのです。
  女子高校生2人、カミユとエルザ
  :カミユはサイード通う高校の校長の娘で、サイードが恋している相手。今回、サイードはカミユが参加する巡礼旅に同行するためにラムジと母を騙したようです。
  エルザはカミユの連れで学校友達(クラスメイト)。カミユの伯父が姪の進級祝いにと、巡礼旅に料金を払って応募したため、彼女は友人として仕方なく参加することになったらしい。

■何も持たないクロード■

  7人が集まったところに、クロードは遅れてきました。
  というのも、電車賃の100ユーロがなかったからです。だが、遺産はほしいので、パリの家からタクシーで来ました。210ユーロもかかりました。集合場所で兄か姉に借りようと算段してのことです。
  だが、クララは軽蔑のまなざしで断りました。そこで、ピエールが弟の尻拭いをするしかないということで300ユーロを弟に渡して、タクシー代金を払わせました。
  けれども、クロードは臆する風がまったくありません。見栄や羞恥心は、はるか以前に捨て去ったらしいです。

  参加者はみんな大きなバックパックを背負っていましたが、クロードは手ぶら。着替えも洗顔用具もありません。
  ギュイからは辺鄙な田舎道ばかりを歩くので、着替えや洗面用具を買える店の近くは通らない、と釘を刺されましたが、何の痛痒も感じないようです。

  とはいえ、何の荷物も持たないというクロードの姿勢が、中世からの巡礼の精神に一番近いのかもしれませんね。

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