サンジャックへの道 目次
原題について
見どころ
予備知識として
聖ヤ―コブ伝説
奇蹟の伝説と巡礼風習
あらすじ
不仲の3人兄妹弟
出発地のルピュイ
道連れの面々
何も持たないクロード
現代フランス人の旅
「やれやれ」な旅立ち
余計な重荷は捨てるしかない
「余計なもの」を捨てる旅
人生は重荷を背負った上り坂
クロード
ラムジ
カミユ
マティルド
ギュイ
人生の出会いと交錯
「原則」とリアリズム
道連れ、そして仲間意識
ラムジの境遇
課題を見つけたクララ
ラムジの学習
「薬漬けの日々」からの脱出
聖職者たち
聖職者も人間・・・
誠実な神父もいる
強欲で罰当たりな司祭
聖地まで歩き続けるぞ!
虚栄で流行を追う者
寄せ集め国家の不協和音
仲間は兄弟、助け合うもの!
聖地巡礼で得たもの
クロードの酒気を抜け
巡礼旅の終わりに
エピローグ

聖地まで歩き続けるぞ!

  ピレネー山脈の峠を越えればエスパーニャです。そして、この山脈が最大の難所なのです。3000メートル級の山岳が続いています。
  ウェブで西仏国境のピレネー地方の地図を見てください。できれば、サンティアーゴ・デ・コンポステーラの巡礼地図も。サンティアーゴ巡礼の道がいかに険阻な山道かわかります。

  インストラクターのギュイは、ルピュイからロンスヴォーに続く道を山脈のふもとで曲がって、トゥールーズからジャカ(西語でハーカ)にいたる道をたどったのかもしれません。その場合、フランス最後の宿駅は、たぶんオロロンでしょう。
  とにかく、そこが、ピエールたちの母親が遺言書で3人兄妹弟が歩いて到達するべき目的地と定めた場所のようです。

  そこに一行はたどり着きました。ギュイは言います。
  「あなたがた3人は、本当はここまでで終わりです。これで、遺産を相続できますよ。お母上は、ここが本当の終点と書き残してあります」
  というわけで、3人は一瞬、やれやれこれで苦難も終わった。母親孝行もできたし、遺産相続もOKだ。と一安心です。
  3人は、一行と別れを惜しんでから、市街地の駅の方に向かって歩き始めました。

  ところが、10歩も行かないうちにピエールは立ち止りました。そして、くびすを返しました。
  「あら、巡礼旅に戻るの?」とクララ。
  「兄さんは、サンジャックまで歩き続けるのが親孝行だとでも言うのかい?」とクロード。
  「そうだ。悪いか!
  俺は今まで、自分でやりたいと思ったことを最後までやり通したことがない。都合や理由(金儲けのためという理由)をつけて、いつもやりたい望みを諦めてきた。今度くらいは、最後までやり抜くぞ。
  クロード、お前は弁舌さわやかで女あしらいもうまい。うまくやってきたさ。
  ところが、今の俺には酒浸りで自殺衝動に取りつかれた妻しかいないんだ。
  今度こそ、俺は自分がやりたいようにやる!」
と啖呵を切って、巡礼の道に戻っていきました。

  金はあっても、自分が望むものは手に入らなかったというのでしょう。いや、金持ちになり企業間競争で生き残るために、自分の個人的な望みは抑え込んできたということでしょうか。してみれば、妹や弟への反感は、違う人生を歩んできた妹弟への羨望、あるいは自己嫌悪の裏返しだったのかもしれませんね。
  クララもすぐ後を追いました。ラムジのことが気がかりだし…。
  クロードも戻り始めました。
  こうして3人はサンジャックへの道をたどり始めました。

  さて、別れた一行は、ピレネーの難所、何十キロメートルも続く山脈越えの道に差しかかっていました。歩きの速度が落ちています。
  そこで、3人は追いつくことができました。
  後ろから、3人が近づいてきたことに気づいたエルザとカミユは喜びました。ほかのメンバーの顔も輝きました。苦しい上り坂に挑戦する意欲が強まったのです。

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