サンジャックへの道 目次
原題について
見どころ
予備知識として
聖ヤ―コブ伝説
奇蹟の伝説と巡礼風習
あらすじ
不仲の3人兄妹弟
出発地のルピュイ
道連れの面々
何も持たないクロード
現代フランス人の旅
「やれやれ」な旅立ち
余計な重荷は捨てるしかない
「余計なもの」を捨てる旅
人生は重荷を背負った上り坂
クロード
ラムジ
カミユ
マティルド
ギュイ
人生の出会いと交錯
「原則」とリアリズム
道連れ、そして仲間意識
ラムジの境遇
課題を見つけたクララ
ラムジの学習
「薬漬けの日々」からの脱出
聖職者たち
聖職者も人間・・・
誠実な神父もいる
強欲で罰当たりな司祭
聖地まで歩き続けるぞ!
虚栄で流行を追う者
寄せ集め国家の不協和音
仲間は兄弟、助け合うもの!
聖地巡礼で得たもの
クロードの酒気を抜け
巡礼旅の終わりに
エピローグ

仲間は兄弟、助け合うもの!

  難路ピレネーを越えた一行は、カスティーリャの平原に入り込みました。
  その最初の街で、とある教会に食事と一夜の宿を申し込みました。
  ところが、夕食の席で司祭は偏見を口にした。
  「さて、宿泊を認めることができるのは、肌の色が濃いめの3人の方を除いた方々だけです」
  ギュイとラムジ、サイードを泊めないというのだ。人種的にヨーロッパ人ではないからだ、と。

  フランコ時代の名残でしょうか。それとも、500年以上もたったのに、いまだにレコンキスタを戦っているつもりなのでしょうか。
  あの闘争を指導したのは、そして過酷な異端審問をおこなったのは、一部のイエズス会修道士でしたが。

  一行は、強い反感を感じ口々に反論します。
  一番憤慨したのは、ピエールでした。
  「フランコのファシズムはもう終わったんだぞ。人種偏見や民族差別を巡礼に持ち込むな。
  俺たちはみんな苦労を分かち合ってきた兄弟なんだ。兄弟はいっしょにいて助け合うものなんだ。
  いつも立派な説教を垂れるくせに、神の普遍的な愛を持ち合わせないのか。口先ばかりの腐れ神父め!
  もう頼まない。俺が自腹を切ってみんなをホテルに泊まらせるんだ。あばよ!」

  唖然と見つめるのはクララ。あんなに妹や弟を嫌っていたのに、ここで「兄弟愛」を言い張るなんて。
  「ピエール、本気なの?」
  「聞くな。何も言うな。言いたいことを言わせろ!
  みんな高級ホテルに行くぞ。料金は俺が全部請け合う。まかせとけ!」とピエールは先頭を切って出ていきました。
  クララ、ギュイ…全員が教会を出ていきました。

  最後に出ていったのはラムジです。彼は人を疑うことがないようです。その彼は、別れの挨拶として司祭に神の祝福を与えました。もちろん、イスラム方式で。
  「アッラー、アクバル(神の力は絶大なり)」
  目をむく司祭。

  ピエールが先頭に立って、一行は市内の高級ホテルにチェックインしました。2人ずつで、こじんまりしているが上等なトゥインルームに分宿することにしました。
  この3か月近く、まともにシャウワーやバスを浴びていないので、みんな救われたように湯を浴びて、ふかふかのベッドで眠りました。

  それにしても、巡礼旅で新たな自分を発見したのか、他人のために自分の財布(クレディットカード)から金を持ち出すことが大嫌いだったピエールが、仲間のために金を使ったのです。

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