ロイ・ミラー率いる機動探索部隊METの小隊は、大量破壊兵器を探索するため、その保管・隠蔽場所に関する情報を受けて毎日のように出撃しているが、いつも空振りだった。やがて、METには虚偽の情報が与えられているらしいことに気づいた。
だが、軍情報部や上官に問い質しても回答を得られないばかりか、威圧によって質問を封じられてしまう。イラク駐留軍の上層部は、ブッシュ政権=大統領府におもねって占領政策や軍の展開を指揮しているのではないか。
そういう疑いを抱いたロイは、旧イラク軍幹部に会ってフセイン政権の大量破壊兵器開発WMDをめぐる本当の動きがどうだったのかを知ろうとする。
ところが、ミラーは騒乱のなかで拉致されてアラウィ(アル=ラウィ)のもとに連行され、イラク軍のWMDをめぐる「真実」を知る。フセイン政権はWMD開発をかなり前に放棄したというのだ。
アメリカは虚構の根拠によってイラクに対する戦争を開始し、国家を破壊したのだった。ブッシュ大統領による「戦勝宣言」がおこなわれ、イラク軍は解体された。
だが、それは国内世論操作のための政治ショウにすぎず、イラクの破壊と混乱は収拾がつかない泥沼になっていく。
しかし、メディアをつうじてブッシュ政権に都合のよい虚偽の情報が世界中に垂れ流されたのだ。ここでは、映像物語の結末を見たあとで、イラク戦争の問題諸相を考察する。
原題は Green Zone 。「グリーンゾーン」とは、イラクを制圧・占領したアメリカ&連合軍が厳重な治安・警戒態勢を敷いたバグダード市中心部の地区を意味する。だが、ロイたちMETが出撃し探索活動をおこなうのは「レッドゾーン(危険地帯)」だ。
この映画の翻案のもとになった著書は Rajiv Chandrasekaran, Imperial Life in the
Emerald City: Inside Iraq's Green Zone, 2006 ―― ラジヴ・チャンドラセカーラン著『エメラルド色の都市での帝国権力のありさま:イラクのグリーンゾーンのなかで』、2006年刊。
「インペリアル」という語は「横柄で豪勢な」という意味があるので、「インペリアル・ライフ」とは、イラク占領軍本部の幹部たちの態度や行動スタイルを皮肉っているのかもしれない。
この著作は、2003年、アメリカ&連合軍によるイラク制圧直後のバグダードを中心とするアメリカ軍METと司令部の動きを描き、開戦理由が虚偽であることを暴露したノンフィクション。なお、映画で描かれる物語はすっかり脚色されていて、フィクションになっている。